韓国における教育の世界化への努力に経済危機が与えた影響

淑明女子大学教授 洪 圭徳

 

■就職できた卒業生は20%

 アジアの経済危機は、韓国の大学のキャンパスライフに強い影響を与えてきた。キャンパスでは、「今年の卒業生は、神に呪われたか見捨てられたに違いない」というジョークが語られている。学生たちは仕事を探すのに大忙しである。統計によれば、今年の大学卒業生で仕事を見つけられるのは20%に過ぎないだろうという。[注1]しかし、この数字には大学院に行くことや、軍隊に入ることを決定した者も含まれている。したがって、実数はこの数字をはるかに下回っているに違いない。多くの男子学生は、26カ月間の兵役義務期間が過ぎて帰ってくる頃には、事態が良くなっているだろうという希望のもとに、早めに軍隊に服役した。一方、ほとんどの女子学生は仕事の市場に参入する前に1年間の休暇を取る。

 経済的困難に直面する前は、多くの学生が北アメリカの学校で英語を学ぶために留学しようと試みた。例えば淑明女子大学では、過去2年間に200名以上の学生がアメリカ、カナダ、オーストラリアに英語を学ぶために留学した。それ以上の学生が夏休みの間に、いわゆる「バック・パッキング・ツアー」(背荷物を担いでする徒歩旅行)をしにヨーロッパに行った。上昇する韓国の経済力と、金泳三政府が、とりわけ世界化を強調したことによって、学生たちは仕事の市場に参入する前に外国に行き、海外生活を経験するように強いられた。教育部もまた、各大学に対して、学生に交換留学生として海外の大学へ行く機会を与えることを奨励してきた。実際、多くの大学が学生を海外に送るための姉妹校をより多く持とうと競争している。

 教育部が提示した統計によれば、1992年には90の韓国の大学が56カ国の920の大学と学術関係を持っている。しかしながら、1997年には、その数字は2130に急増し、130の韓国の大学が76カ国と関係を維持している。[注2](図1、2を参照)

 その数の増加にも関わらず、実際に行われている交流は実質的というには程遠い。ほとんどの大学は協定にサインしてはいるが、それを実行することは滅多にないのである。2130の大学のうち、640はアメリカの大学との提携である。一般的に、アメリカの大学の授業料、部屋代、および食費は15,000〜25,000ドルほどかかる。しかし、韓国の大学の授業料は通常5000〜6000ドル程度である。したがって、学生の交換は必然的に教育費の格差をいかにして補正するかという問題を引き起こすであろう。当該大学間で協定にサインするとき、通常それらは交換は相互になされるべきであると規定する。すなわち、もしアメリカの学生が交換留学生として韓国の大学に来なければ、韓国の大学は、たとえ自校の学生たちが行くことを望んだとしても、その学生を米国の姉妹校に送ることはできないのである。これが海外の姉妹校に行く学生の実数が、常に限定されている主な理由である。

 例えば、淑明女子大学においては、われわれは今年、米国の3つの異なる大学に4人の学生を送った。しかしながら、淑明女子大学にはたった1人のアメリカ人学生がコー・カレッジ(Coe College)から交換留学生として来ただけである。韓国の大学に来て、まるまる1・2学期を過ごすようなアメリカの学生や教職員を見つけるのは、並大抵のことではない。したがって、それらの大学にわれわれの学生を送るチャンスは年々減り続けている。彼らは、われわれの学生が授業料、部屋代、および食費を全額払えば許可を与えるだろうと提案するが、どんな韓国の学生も、交換留学生として一年間授業に参加するだけの費用を支払うことは困難であろう。

 学生が中国やロシアに行きたがっている場合には、問題はさらに悪くなる。それらの国々の教育システムは、韓国人がよく慣れ親しんでいるアメリカのシステムとはまったく異なるからである。1997年には、326の中国の大学と、123のロシアの大学が、韓国の大学と学術関係を結んだと報告された。しかしながら、それらの大学では、韓国の学生たちは授業料、部屋代、および食費を払わなければならないのに対して、地元の学生たちは一切払わないか、韓国の学生に比べて極めて小額のお金しか払っていない。批評家たちは、韓国における高等教育に対する過度の熱意が、これらの大学に毎年何百人の学生を送ることによって、その生存を経済的に支えているのであると論じている。これらの旧社会主義国とは、学生交換が一方通行になってしまっているのを見るのは、不幸なことである。

 他のASEAN諸国との関係は、さほど重要ではない。韓国のわずか4つの大学が、マレーシアの5つの大学と関係をもち、韓国の3つの大学が、シンガポールの4つの大学と学術的な繋がりを持っているだけである。一方、韓国の21の大学が、フィリピンの27の大学と学術的関係を持っている。そして、韓国の12の大学が、タイの18の大学と学術的な繋がりを持っている。インドネシアにおいては、15の大学が韓国の12の大学とネットワークを持っているだけである。地理的な近さにもかかわらず、ほとんどの学生交換は語学訓練の分野に限定されており、その数は他の分野へと拡大していかない。

 伝統的に、韓国においては日本や台湾の学術機関との関係が強い。韓国の85の大学が日本の288の大学と関係を持っており、一方、韓国の49の大学が台湾の69の大学と関係を保っている。ヨーロッパでは、韓国の34の大学がフランスの53の大学と関係を持っており、40の大学がイギリスの72の大学と繋がりを持っている。1997年の時点で、韓国の約30の大学がドイツの53の大学と学術関係を持っている。ここでも同様に、多くの韓国人がさらに勉強するためにヨーロッパに行っているのに対して、韓国において学んでいるヨーロッパ人は少ない。

 今まで見てきたように、韓国の学生は、外国の多くの大学とのこのような学術的関係によって利益を受けてはいない。とりわけこのような意味において、大学は、外国の大学とのそれほど広範な学術協定を学生が利用することができるような、より実際的な機会を学生に提供することに取り組むべきである。

 国際理解の教育は、異なる国々の間の学術交流によって成し遂げられると思われる。しかしながら、人々が国際教育をドルやセントで利益をあげるための現実的かつ潜在的な市場とみなしており、それが現時点において学生交換を促進する最も重要な規準となっているのを見るのは、残念なことである。

■教育の世界化に大きな影響

 韓国がIMFの緊縮処置に入る前には、教育が上流社会に入るための確実な機会を与えてくれるだろうと信じていた韓国人にとって、高学歴の夢を成就するためには、お金が問題ではなかった。韓国における国民一人当たりの収入は約1万ドルであり、その経済は世界で第11位の大きさにまで成長した。韓国人たちは、もし経済が同じような比率で成長を続ければ、21世紀の初めまでには国民一人あたりの収入は2万ドルにまで上がり、国民総生産は1兆ドルを越えているだろうと信じて疑わなかった。[注3]

 残念ながら、このような純然たる楽観主義は偽の約束であることが明らかになった。教育を世界化しようとする韓国の努力は、妥協せざるを得ない。金大中新大統領は、GNPの約6%を教育費に使うことを約束した。しかし、これは多分に彼の経済困難を克服する能力に依存している。金大中政府が経済危機の嵐を切り抜けることができるかどうかは、まだこれからだ。韓国が緊縮過程に入るとき、生活水準の劇的な低下、爆発的に増える失業、そして増大する困難は避けがたい結果であろう。したがって、今日懸念されているのは、もし危機が続けばそれは政治的・社会的な変動を引き起こす可能性があり、金大中政府としては教育の世界化にのみ排他的に資金を分配するのは難しくなるだろうということだ。

 1998年度の教育予算は17兆4,860億ウォンだった。しかし、政府は1998年9月24日に1999年度予算案を発表し、現行の改革に対する財政援助と弱体化しつつある工業部門に対する下支えによる経済再生を強調した。[注4]公式発表によれば、教育費は5.1%削減されるという。1999会計年度には、16兆5390億ウォンが割り当てられる予定である。[注5]他の部門に比べて、それは大幅な削減であるとみなされている。予算の削減は、多くの大学の世界化プログラムに深刻な影響を与えるであろう。

 経済危機は、現在留学している者にも影響を与えるであろう。アメリカ海外情報局によると、1996〜97年のスクール・イヤーには、約37,000人の韓国人が米国の大学で学んでいる。[注6]1998年5月に260の大学を対象に調査した反応を国際教育者協会(NAFSA)と国際教育協会(IIE)が集計したものによると、1997年の秋学期から1998年の春学期までの期間は、韓国人学生のドロップアウト(中途退学)率が通常よりもはるかに高くなっていることが報告されている。[注7]

 大学は通常、秋学期から冬学期の間に全学生の2〜7%の中途退学を経験する。統計によれば、回答した大学のうち32.7%が1〜10%の韓国人学生が中途退学したことを報告し、18.4%が11〜20%の中途退学を報告し、8.2%が21〜30%の中途退学を報告し、2%が31〜50%の中途退学を報告し、そして2%が50%以上の中途退学を報告した。[注8]

 IIEは、アジアの経済危機によって最も大きな影響を受けたのは英語の集中講座であったということを発見した。それらは学位取得のプログラムのような融通性がなく、また組織的な支援も得られない。台湾、インドネシア、およびタイから入学する学生数は20%台ぎりぎりのダウンを示したのに対し、韓国からの学生は20〜50%減少した。例えば、淑明女子大学では毎夏約90名の学生が奨学金の助けを借りて、カナダとアメリカに四週間の英語集中講座を受けに行っていた。大学は優秀な学生を選んで、プログラムの経費の半分を負担する。しかし、今年は経済危機のために大学は補助金をキャンセルし、一時的にプログラムを停止したのである。経済的には厳しい現実が継続しているにもかかわらず、アジアの学生のアメリカの高等教育を受けることに対する興味は消えうせることはない。しかしながら、学生たちは奨学金の給付という恩恵がなければ、アメリカの学校に申し込もうとするとはとても思えない。

 このような韓国の経済危機を背景として、この研究は、とりわけ経済危機下においていかにして国際交流と協力を促進するかを検討しようとするものである。われわれが世界大恐慌の際に経験したように、経済危機はわれわれを混沌状態に陥れるという仮説がある。国際関係の歴史がどの程度同じことを繰り返すのか、という問いかけに対しては、恐らく誰もが同じ答えを持っているわけではないであろう。しかし、われわれが過去の最悪の過ちを繰り返したくなければ国際理解の教育を強調すべきである、ということは誰にも否定できない。

 われわれは、1920年代のあの困難な日々に、英国・アバリストウィスのアルフレッド・ジマーンや、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのフィリップ・ノエルベイカーなどの学者が、共通の地盤を築くために最大限の努力を傾け、人とアイデアの交換を通じて国際的な協力と理解を促進しようと懸命に試みたことを思い起こすべきである。どういうわけか、戦争に反対する世界的な世論を喚起するために教育による思考の力を用いようという彼らの偉大な努力は、現実主義者たちによってユートピア的な望みとして退けられた。しかしながら、教育的交流を削減すべきでないということを強調することは非常に重要である。われわれは経済的な困難のゆえに国際交流を停止するという過ちを再び犯すべきではない。今日、学生たちは出費を懸念するようになっており、特に多くのアジアの学生たちは、政府がその資金を経済を軌道に戻すために注いでいるために、学費の確保が困難になってきている。[注9]しかし、われわれは既に米国その他の国々で学んでいる者たちが、留学を継続できるように支援する道を見出すべきである。これらの学生たちは、自国と滞在国との長期的な関係にとって重要な橋渡しの役割を果たすであろう。

■教育の世界化についての論争

 教育を世界化しようとする韓国政府の努力を批判する者たちにとっては、経済危機は必ずしも多くのより悪いケースの一つではないかもしれない。この危機は韓国の教育における過度の「バブル」を取り除くという皮肉な役割を果たしたのである。したがって、批判者たちはこの危機を、韓国の教育の世界化において前政権が犯した過ちを正すための機会であると見ているのである。

 金泳三前大統領が自国の世界化の必要性を強調したとき、世界化は多くの学会や政策立案者の間で突如として流行となった。世界化についての多くの議論にもかかわらず、世界化がいかにしてなされ、韓国の教育がどのような世界化を目指しているのかを確信しているものは一人もいない。

 ホレイス・アンダーウッドが適切にも言ったように、韓国の教育における国際化の努力は一方通行であった。[注10]10万人もの韓国人が海外に留学する一方で、僅か2000〜3000人の外国人学生が韓国で学んでいるに過ぎず、しかもそのほとんどが韓国語の語学プログラムであり、学位取得のプログラムにはほとんど誰もいない。韓国人の教職員はアメリカにおいて多くの分野で教えているが、韓国では外国人教職員は語学部門以外にはほとんど見つけることができない。

 例えば、淑明女子大学においては244人の教職員のうち、38人の外国人教授が英語を教えている。しかし、語学部門以外で専任教授として教えた者は、いまだかつて一人もいないのである。大学が1906年に創立されたことを考えると、教授の中に外国人を参加させるのを妨げてきたという点では非常に排他的であったと言える。1887年に外国の宣教師によって設立された非常に西洋化された大学の一つである延世大学においてさえ、状況は淑明女子大学と比べてほとんど大差がない。

 実際、今日の延世大学における専任の外国人教職員の数は60年前よりも少ないくらいである。韓国の主流の大学においては、他の大学を卒業した者がその大学に就職することはまずあり得ない。例えば、ソウル大学の教職員の96%は同大学出身者である。さらにソウル大学には専任の外国人教職員はいない。主流大学のほとんどの韓国人教授たちは海外のPh.Dを持っており、彼らの学歴欄には世界中の高等教育機関が羅列されている。しかしながら、彼らは決して外国人教授を正規の教職員として雇おうとは考えないのである。

 金泳三政府は、国際関係を研究する大学院を開設しようとする9つの大学を支援することを決断した。韓国政府は大学院生のための国際プログラムを設立するための資金として、各大学に25億ウォンずつを支給した。しかしながら、これら9つの大学のうちで、外国人教職員を正規の教授として雇ったところは一つもなかった。また、外国人学生を正規の学生として受け入れたところも、延世大学を除いて一つもなかった。延世大学では、韓国生まれのアメリカ人学生数名と僅かな外国人学生が入学しただけである。

 批判的な者たちは、いくつかの大学院を国際化しようという政府の計画は、高等教育を世界化するというその目標を、決して達成することはないだろうと疑っている。これらの大学院では、海外に留学したことによって流暢な英語が喋れる韓国人教授たちによって、英語で授業が行われている。しかし、政府や事業体が資格を持った専門家として、これらの大学院の卒業生を雇うかどうかについては、誰も確信が持てないでいる。これらの大学院は政府の補助金を使ってその学生に奨学金を与え、実習生の旅費を支出した。しかし、韓国政府はこれらの大学院に対して、より適格な外国人教職員を雇ってその学生を教育するように要請すべきであった。恐らく、学校当局は限られた資金で有名な外国人学者を韓国に呼んでくるのに困難を覚えたのであろう。しかし、多くの人々がほとんど似たようなプログラムを持った9つの大学にあのような巨額の補助金を与えたのは、誤った判断であったと認めている。

 政府は、なぜ韓国人が国境を超えた事柄に無関心なのか、またなぜ韓国人にとって自分たちとは異なるものを受け入れるのがそれほど難しいのを考慮しなければならない。世界化は、韓国の文化や考え方を根本的に変えて、他の人々やものの見方に適応することを要求する。したがって、世界化された教育は、学生たちにいかにして他者に気遣い、いかにして異なった歴史と文化的背景を持った人々と通じるかを学ばせるであろう。そのような教育は学生たちに、他の民族、社会、およびその文化の異なった視点を理解し尊重し、彼ら自身の文化的指向性がいかに他の人々や文化に対する彼らのアプローチに影響を与えるかを理解し、そして価値あると思われるいかなる文化の要素をも受け入れることを奨励するであろう。しかし、現時点の韓国においては、このようなタイプの文化的多元主義教育を望ましいと考える感覚すら存在しないのである。

 その全歴史を通して、韓国人は猜疑心をもって世界を見ることを学んできた。弱小国家として、彼らは機会あるごとに、しばしば侵略する隣国の力によって苦しめられた。韓国人はそのような生存に対する強い本能を維持してきたのであり、彼らは自らを取り巻く勢力に対抗するだけの力量がないことを悟っていたため、より強大な勢力に対するその態度はアンビバレントなものとなった。この種の文化的伝統はいまだに続いており、金泳三政府は国家の利益追求を最大限にするために世界化の必要性を提案し、自身を外国の挑戦や進出から守ったと思われる。

 したがって、他の文化や社会を尊重し、それらといかに協力するかを学生に教育するというようなコンセプトは存在しなかったのである。そのかわりに、彼らは世界の最高レベルに対する自国の競争力を高め、外国の影響から自国の利益を守るために、英語を教えるのである。

■金大中大統領のビジョン

 経済危機は、大部分の韓国人にとってショックであった。1年ちょっと前までは、韓国は世界で最も急成長している国の一つであり、その発展は貯蓄率の高さ、規律正しい職業倫理、および責任ある財政上の行動によって支えられていた。しかし今は、国際化のもたらす利益に対する深刻な疑念が唱えられ、反国際通貨基金感情が表明されている。

 そのような状況下において、長年の野党指導者であった金大中が1997年12月18日に大統領に選出された。金大統領は同族主義、腐敗、不適当な銀行制度、および非能率的な財閥と闘わなければならない。人々の間では、われわれは国を再建しなければならず、「再び走り出そう」運動を起こさなければならないというコンセンサスが築かれてきており、この運動は民衆の支持を得ている。

 1998年8月15日、金大中は、韓国人は第二の建国を必要としていると述べた。金大統領は第二の建国を成し遂げるための六つの原則を提示した。とりわけ、彼は韓国人の世界に対する態度と価値観を変える必要性を強調した。金大統領は「われわれは独善的なナショナリズムやその他の時代錯誤の思考を脱ぎ捨て、普遍主義と世界主義に基づいた新しい価値体系を確立しなければならない」[注11]と述べた。

 金大統領は自らの関心を次のように表明した。「他国の多くの人々が、いまだに韓国を近寄りがたいとみていることは、残念なことであります。そうあるべきではありません。われわれは国際社会の中で、友好的なパートナーシップを企画しなければなりません。友好的なパートナーシップは、輸出と観光産業を促進する上で、また外国資本を誘導する上においても、不可欠な財産であります。この意味において、私は国際交流と人的資源の開発を促進することによって、来るべき世界化時代に準備するための真摯な努力をするつもりであります」。

 金大統領はまた、韓国における教育の非能率的なシステムの問題を指摘している。彼は「政府は、来るべき未来における国の運命を決定付ける科学と情報テクノロジーの水準を劇的に向上させるでしょう。教育は未来の成功の基礎であるという固い信念に基づいて、私の政権は創造的な学習システムを是とし、現在の非能率的な実践を段階的に消滅させていきます」と確約した。

 金大統領はさらに現在の大学入試制度を改革することによって、教育制度を変えることができると提案した。彼は「私の全人格教育の哲学は、知恵、徳、肉体的健康の三つの柱からなっています。私が意図しているのは、両親に多大な経済的重荷を強いている進学準備期間のいらない、新しい大学運営システムを作ろうということです。新しい教育運動と連結して、政府は21世紀において中心的な役割を果たすであろう文化関連産業を促進するよう努力します。第二の建国の理想は、創造的で多様化された教育と豊かな文化的環境に支えられた強固な知識の基盤を持つ国を建設することです」と言った。

 金大統領のビジョンが実現するかどうかは、まだこれからである。私は非能率的な教育システムを改革するという彼の基本的な議論には同意する。しかしながら、淑明女子大学対外協力室の室長として、私は現在大学当局が進めている国際理解の教育を実現するための活動計画には到底満足できない。私には、学生たちは地球村に住んでいる隣人たちをいかに気遣うかということを、できるだけ早く学ぶ必要があると思われる。ほとんどの韓国の学校において、学生と教職員の比率は想像を超えている。そこにはまた、学生が国際協力の分野で経歴を積むのを助けるスタッフを支えるような、有能で経験ある学生もいない。このような環境下で、教授たちは自分の生徒たちに専念できないでいる。また、学生たちは時間とエネルギーを浪費している。政府は学生たちが外国へ行って、他の民族や文化に触れる経験を持つのを助けるために、その資金をもっと多く使わなければならない。金大中政権は韓国のほとんどの大学に対して、外国からの教職員や学生をもっと多く招待するように規則を変えることを強制すべきである。

 最後に、大学は学生たちが国境を超えた文化多元主義的な脈絡の中で、長・短期のさまざまな活動に参加できるような実際的なプログラムを提供することに熱心に取り組むべきである。われわれが必要としているのは、言葉ではなく行動である。人々がよりよく世界を理解し、他者と協力するよう教育するのは基本的にわれわれの義務である。しかしながら、世界の中のこの特定の国においては、近隣の国家や知識人たちもまた、世界をより良くするために貢献することのできる韓国人となるように、援助する責任がある。なぜなら、われわれは実に地球村に住んでいるのであり、われわれは自分たち自身の惑星地球のために、より平和で平等な21世紀の世界秩序を構築していかなければならないからである。

■女性の声を十分に反映を

 急速に変化する世界にあっては、高等教育機関とその職員および学生は、地域社会、国家、および地球社会の福祉に影響を与えるような問題を特定し、呼びかける上において、建設的な役割を果たすべきである。しかしながら、韓国における教育の世界化の努力は、主として学生たちに早期に語学を習得させ、国際的環境で働くことのできる専門家や交渉役を生み出すために、国際関係の大学院を創設することに焦点を絞ってきたため、誤った方向に向けられてきた。

 現時点では、韓国の経済危機によって、政府は現存の世界化教育のプランを継続する能力を削がれるあろうと思われる。したがって、学生や教職員により多くの国際社会での見習や実習に参加し経験を積むチャンスを与えるような、より実際的なプログラムを創造することが考慮されるべきである。とりわけ、韓国の女性たちの声を十分に反映させることを阻んでいる政治的・社会的な壁を取り除き、彼女たちがそのような地球社会における機会に積極的に、参加するよう後押しするための努力がなされるべきである。

 経済的な拘束の中にあっても、外国の大学との繋がりを強化することはできるし、学生交換は奨励されるべきである。しかし、われわれが既に見てきたように、大部分の大学間の学術的協定は、ほとんど学生の役に立っていない。世界的な大学間の結束と真のパートナーシップという原則は、地球規模の課題、民主的な政府と有能な人的資源が決議において果たす役割、異なった文化や価値観と共に生きることの必要性、といったものに対する理解を奨励するすべての分野における教育と訓練にとって、極めて重要でなものである。国際的な舞台において、いかに他者と協力するかという方向へと韓国の学生の心を変えさせるようなカリキュラムや活動プログラムを作り出すことが考慮されるべきである。

(1998年12月2日発表)

[注]
1. Don Kirk, “Campus Life: Work, No Fray,” International Herald Tribune (October 12, 1998), p.15
2. Ministry of Educaition, “Document for Academic Exchanges Between Korean Universities and Foreign Universities,”Dae Je 81210-331 (1998.8.17)
3. Business Week (July 31, 1995), p.38
4. The Korea Herald (September 25, 1998), p.1
5. Ibid.
6. Lisa Twaronite, “Asians in U.S. learn to Adapt”, International Herald Tribune (October 12, 1998), p.15
7. Andrew T. Chan and Danielle R. Miller “U.S. seeks to help Korean Students Hit by Asian Financial Crisis,” USIS Information Service, (1998.8.28), (http://www.usia.gov./posts/seoul)
8. Ibid.
9. Nopporn Wong-Anam, “Lessons in Austerity,” Far Eastern Economic Review (August 20, 1998), pp.28-29.
10. Horace H. Underwood, “Global Competence: The Internationalization of Korean Education,” KIEC Annual Conference, November 22, 1996.
11. Kim Dae-jung speech on the 50th anniversary of the founding of the Republic, Korea Herald, August 15, 1998