インターネットの危険性:
サイバー・セックス中毒と児童ポルノ

米国・イナフ・イズ・イナフ マーケティング・広報担当副会長 ドナ・ライス・ヒューズ

 

1.インターネットの危険性

(1)インターネットの悪用とその現状
 私は過去7年間、インターネットの危険性にかかわる諸問題に取り組んできた。この間、統計上の数値はもちろん変化したが、問題の根本は何ら変わってはいない。むしろ現状は悪化していると言わざるを得ない。私は教会の父母たちに語る時も、国会で証言する時も、あるいはマスコミのインタビューに答える時も、この問題の深刻さを理解していただけるよう心がけている。

 ある予測によると、2003年までに約4200万人の子供たちがインターネットを使うようになると言われている。「ファミリーPC」誌の調査では、現在、95%の親が家庭でインターネットにアクセスできる環境を持っていると回答している。

 十代の子供たちによるオンラインの使用方法の上位二つは、Eメールと検索エンジンである。このことは、ポルノ業界あるいは小児性愛者によるインターネットの悪用について語る時、非常に大きな意味を持つ。

 子供たちの4人に1人は、同時に会話を楽しむことができる「チャット・ルーム」(chat room)や「インスタント・メッセージ」(instant massage)などのサービスを利用している。

 インターネットの危険性に関して言えば、子供を含むすべての人々(ちなみに私の説明は主に子供に関するものであるが、すべてのインターネット利用者についても同じことが言える)が、家庭、学校、図書館などインターネットを自由に利用できる場所において、あらゆる種類の不適切で違法な内容に容易に無料でアクセスすることができる。つまり、不適切な情報へのアクセスを防いだり取り除いたりするためのソフトウェアが整備されていないのである。

 子供はあらゆる種類のポルノ画像にアクセス可能である。数年前に我々がこの問題について取り上げ始めた頃、人々は一般的に「ポルノ」と言えば「ソフトコア・ポルノ」のことを指しているのだろうと考えたものである。しかしながら、インターネットでは、ソフトコアどころか、あらゆるものが入手できてしまう。何でもありという状態である。皆様は、Eメールを受け取ったり、間違った検索文字を入力したりして、偶然ポルノサイトにつながってしまったという経験はないだろうか。

(2)ポルノと法整備
 ここで、インターネット上で入手可能なポルノの法律上の区別をいくつか紹介したいと思う。

 第一に、「児童ポルノ」(child pornography)である。子供の性的行為や猥褻なポーズを描写したものである。これは完全に違法である。第二に、「猥褻物」(obscenity)と呼ばれるものがある。写真や絵画などに対する法律用語で、いわゆる「ハードコア・ポルノ」を指す。これには獣姦、排泄物、拷問、強姦などの常軌を逸したポルノも含まれる。こうしたポルノは、現在の米国の法律で取り締まりの対象となっている。しかしながら、これまでに連邦政府によって行われたインターネット上の猥褻物の取り締まり件数は、全く“ゼロ”なのである。

 これは重大な問題である。大人でさえあまり目にしないような過激なポルノを、子供たちがインターネットを通じて入手しているのはこのためである。これらのポルノは全くといって良いほど摘発されておらず、状況は年々悪化している。これは、私たちが法の執行に関してあまりに寛容な意識しか持っていないためである。ポルノ業界は最悪、最低の内容を提供しようとする傾向にあるが、これがまさに今日の現実なのである。

 三番目は、「未成年者に有害」(harmful to minors)なもので、「ソフトコア」と言われる類のポルノである。大人にとっては出版や放送などのメディアにおいて“保護”を受けるべき表現(言論)、すなわち表現の自由とされているが、これは子供を守ることを念頭に置いた“保護”ではない。「プレイボーイ」や「ペントハウス」などの雑誌がその例である。

 しかしながら、出版や放送などの媒体に対しては、成人向けの内容を子供たちから遠ざける法律がある。例えば、大人は「ハスラー」などの雑誌を購入することができるが、そのような雑誌やビデオの未成年者に対する販売は禁止されている。我々がこのような隔離のための法律をサイバースペースに適用しようとした最初の試みが、いわゆる「通信品位法」(Communication Decency Act)であった。この法案は最終的に最高裁まで争われたが、却下されてしまった。

 その後、米議会は再び「オンライン児童保護法」(Child Online Protection Act)を提出した。この試みは、商業目的のサイト管理者に対し、利用者が成人向け写真を閲覧する前に本人が成人であることを確認するよう義務付けたものである。この法律は、現在も裁判で係争中である。

 端的に言って、猥褻物に関する法律は機能しておらず、インターネット上でそれらを隔離する仕組みが整備されていないのが現状である。児童ポルノを大量に生産している業者のみが、連邦政府の取り締まりの対象となっているに過ぎない。従って、子供は何でも手に入れることができる。ところで、当然のことながら子供にとって不適切な内容は他にもある。暴力的なものや、爆弾を作るための情報、憎悪に満ちた言論などである。

 コロラド州で起きたコロンバイン高校銃乱射事件の公聴会の後、米議会から証言をするよう要請を受けたが、私はそれまでインターネット上の暴力についてはそれほど深く研究していなかった。そこで私が「Bomb-making(爆弾を作る)」という言葉を入力して検索してみたところ、驚いたことに約170万件のサイトが見つかったのである。誰でもこれらのサイトから知識を得ることができ、中には子供たちをターゲットにしたものもあった。子供に台所にある材料を使った爆弾の作り方を教えているのである。これらのホームページの多くは、ポルノサイトへのリンクや広告が掲載されている。これらの分野は互いに深く関わり合いながら市場を形成しているのである。

(3)サイバーセックス
 ここ数年、私が取り組んでいるインターネット第二の危険性は、子供を狙う“捕食者”たちが、容易かつ匿名のまま子供に接触することができる点である。例えば、あなたがセキュリティ・システムの設置されている自宅で、家族のために夕食を作っているとしよう。あたなは子供が二階で宿題をしていると思っているのに、実は“捕食者”がその子と深い関係を結んでいるのである。このようなことは、これまで決して起こりえなかった。この他にも、インターネット・ゲームに関する問題がある。業者が子供たちの生活に入り込み、彼らをマーケティングの対象として扱っているのである。

 サイバー・セックス産業は、インターネット上で着実に成功した最初の電子商取引である。「フォーブス」誌によれば、その規模は年間15億ドルにも上り、さらに成長を続けているという。インターネット上でポルノ業者がマーケティングのために用いるの共通の手段に、「無料ティーザー画像」がある。

 私が話をする父母たちの多くは、「そんなに成功しているビジネスなら、彼らはなぜそのような画像を無料で提供するのか」と尋ねる。誰でも「ポルノ企業家」となることができるので、新たな参入者が次々と競争に加わる。すると、他のポルノ業者に競り勝つために、彼らはサイトの内部で販売している画像のサンプルを無料で提供する。こうした無料画像の提供は、ポルノサイトで日常的に行われている行為である。これらのサイトでは、少なくとも一つ、多ければ数百のカラー画像を無料で見ることができるだろう。

 全てのホームページへのアクセス件数の約60%は、性に関連するものである。ネット上で最も多く検索されている言葉は「SEX」である。そして、興味深い統計だが、2000年のMSNBCの調査によると、約2500万人の米国人が1週間に1時間から10時間の割合で性関連のサイトにアクセスしている。11時間以上でも、470万人に上ったということである。なんという時間の浪費であろうか。

 この研究は、訪問者がどこでアクセスしたのか、例えば自分の家で密かに行っているのか、あるいは職場なのか、学校なのかについては明らかにしていない。しかし、この調査が明らかにしたのは、サイバー・セックスの欲望に最も誘惑されやすいのは学生たちであるという点であった。彼らはまだ成長の途上にある。インターネットに費やす時間も多く、さまざまな性的な試みを行ってみたい年頃である。

(4)巧妙なポルノ業者の戦略
 次に、ポルノサイトへの意図しないアクセスについてお話ししたい。もしポルノ画像のあるサイトを探しているのなら、そこへ到達するのは極めて簡単である。

 問題は、あなたやあなたの子供がそれらのサイトの餌食となってしまう場合である。例えば、あなたが善良で強い道徳観の持ち主だとしよう。こうした類の画像を探しているわけでもないし、必ずしもそこへ到達したいという気持ちを持っている訳でもない。ところが、実はこれらの画像は、あなたの目の前に置かれているのである。

 ポルノ業者は非常に積極的かつ巧妙に人々を欺く。子供がウェブ上でごく普通の単語を検索していても、これらのサイトに繋がってしまう可能性がある。例えば「boys」、「girls」、「toys」、「candy」「apples」などの単語を入力した場合である。単純な入力ミスの場合も同様である。ポルノ業者は消費者を欺こうとしている。インターネットの利用者がたとえポルノ画像を探していなくても、一度でもそのサイトを見せることによって誘惑し、顧客にしてしまおうとの魂胆である。

 ブランド名の悪用は、「スパムメール」のように一方的に送られてくるEメールと同様、よく使われる手口である。ここにスパムメールを受け取ったことのある方はいるだろうか。スパムメールは極めて厄介である。あなたのEメールアドレスが一度送信リストに登録されてしまうと、それを削除するのはほぼ不可能だ。アドレスを変更しなければならない場合もあるだろう。スパムメールの全体の約30%は、ポルノ関連である。

 そして、チャット・ルームやインスタント・メッセージなどもある。NCMEC(National Center for Missing and Exploited Children)が2000 年ある調査を行った。その結果、10歳から17歳の子供の4人に1人が、過去1年以内に前述のような様々な理由で偶然ポルノ画像を見てしまった経験があることが明らかになった。そして62%の父母たちは、子供が問題のあるホームページを閲覧した経験があるという事実を、全く把握していなかったのである。

 更に、「マウス・トラッピング」(mouse trapping、ネズミ捕り)と呼ばれる仕掛けがある。偶然にポルノサイトを開いてしまった時、他のページへ移動するためのボタンをクリックしてもそこから抜け出せないという経験はないだろうか。これはマウス・トラッピングというソフトが仕掛けられているためである。そして、あなたを更にそのサイトの奥のページへと連れ込み、より多くの画像を見せるのである。そのサイトから抜け出そうとする度に、別の画像が表示されるのである。このマーケティング戦略は、人々をなるべく長い時間そのサイトに引き留めておこうとするものである。人々は徐々に抵抗感を失い、やがて彼らの術中にはまって顧客となる可能性がある。

 次に、「ステルス・サイト」(stealth site)と呼ばれるものがある。このサイトに掲載されている画像を一つでもクリックすれば、クレジットカード番号を尋ねられる前に、無料のティーザー画像を見せつけられるのである。

(5)小児性愛者の子供たちへの接近
 さて、ポルノがもたらす害について述べたい。当然のことながら、私たちは自分が目にするもの耳にするものが、私たちの態度や嗜好、行動に影響を与えることを知っている。ポルノは女性、子供、そして男性の品格を失墜させる。それは安っぽい偽物の愛であり、偽物の親密さ、偽物の人間関係である。

 ポルノ画像を見せられてしまった人、あるいは不用意に見てしまった人全てが、必ずしもポルノに耽溺するという訳ではない。しかし、実際にはそうなってしまう場合が多いのである。そして段階的な性の中毒症状を辿ってゆく。すなわち、客観化、無感覚化(抵抗感の喪失)、そしてより強烈な内容、より生々しい画像に対する欲求の強まり、中毒症状、そして行動化へと進む。そして問題が行動化にまで及ぶ時、私たちの身近な公共の安全が脅かされ始めるのである。

 それでは、子供たちを狙うインターネット上の“捕食者”について触れたい。前述のように、小児性愛者らは子供たちに正体不明のまま近づくことができる。また、彼らはインターネットを通じて児童ポルノを容易に入手する。これも先に述べたように、前例のない規模で行われている。

 かつて小児性愛者らは、告訴されたり警察によって発見されたりする危険を覚悟しなければならなかった。なぜなら、以前は児童ポルノを郵便で交換していたからである。ところが、それは過去のことである。彼らは今、インターネットを通じて自由にやり取りしている。警察などに発見されることを恐れるなら、内容を暗号化することさえできるのである。

 また我々が「バーチャル・バリデーション」と呼ぶものがある。これは同じ趣味の仲間(この場合、小児性愛者など)がインターネット上で集まり、お互いの空想や欲望について語り合ったり、法的取り締まりの逃れ方や性的いたずらの方法などについて情報交換したりする場である。お互いに空想を実行に移すよう励まし合ったりもしている。

 現在、4万件を超える個別のサイトが、児童ポルノを掲載していたり、あるいは小児性愛を助長するような内容を含んでいたりする。4人に1人の児童が偶然ポルノサイトに接続してしまった経験があるとする前述の報告は、5人に1人もの児童が過去1年以内に「性的誘惑」(solicitations)を受けたことがあるという事実も明らかにしている。また33人に1人は、子供と接触しようと試みる“捕食者”により、実際に会うことを要求されたり電話をかけられたりするなど、「露骨な性的誘惑」を受けた経験がある。

 それでは、とても興味深いデータを紹介したい。この調査で言及している“捕食者”たちとは、一体どのような人々だろうか。我々はまず薄汚い年配の男性だろうと考えやすい。ところが、我々が発見したのは、極めて意外で憂えるべき事実であった。

 「性的誘惑」を行う者の48%が、少年たちによるものであった。また、「露骨な性的誘惑」の48%も少年たちによるものであった。成人の該当者は18〜25歳までの年齢層であるが、「性的誘惑」の24%、「露骨な性的誘惑」の34%が彼らによって占められていた。
ところで、ポルノは長い間小児性愛者の道具として使われてきた。彼らはポルノを通じて子供たちにいたずらし、刺激し、自制心を失わせてきた。また犠牲者となる子供に、彼らが何をさせたいと思っているかを見せつけ、子供に特定の性行為は許されるのだと教えてきたのである。

2.対策をどうすべきか

(1)ユーザーとしての自覚と責任
 それでは、ここで解決方法へと移りたい。三つの分野の解決方法がある。当然のことながら、この問題に対してはボトムアップ方式とトップダウン方式で取り組まなければならない。我々が何年にもわたって主張してきたのは、一般の人々による責任の共有である。すなわち、全てのユーザー(末端利用者)が責任を持つということである。ユーザーこそが、コンピューターが実際にインターネットへと接続されている場所である。従って、そこには父母たちも含まれるし、学校、図書館、会社など、あらゆるものが含まれる。

 一般の人々は、技術を開発・提供する企業と協力すべきである。技術産業界は重要な役割を果たすことができる。なぜなら、インターネットは技術そのものだからである。産業界はこの重荷を一般の人々と共に背負うことができるはずだ。そして、警察、政府、公共政策に関わる法曹界にも、貢献する余地がある。

 では、一般の人々には何ができるだろうか。一般の人々、特に父母たちは、この重荷を独りで背負うことができると考えてはならない。特に、この種の内容や行為の多くは犯罪であり、違法である。我々が対処しなければならない他の社会的問題においては、父母たちが産業や司法分野の政府指導者から支援を得ている場合が多い。従って、この問題についても同様な措置が取られるべきである。では、インターネット上のポルノについて、ユーザーに何ができるだろうか。

 まず、意識を高めること。そして教育、対策の強化が必要である。我々がよく目にするのは、父母たちがこれらの問題の存在すら知らないという事実である。あるいは、父母たちが自分の家庭や子供、夫または妻には関係ないと思っているのである。しかし、この問題と無関係な人などいない。キリスト教会においてさえ、問題は広がっている。聖職者も例外ではない。「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」という団体のドブソン博士によれば、彼らが牧師向けに行っている電話カウンセリング・サービスにかかってくる電話の7件に3件は、インターネット・ポルノに悩んでいる牧師たちからのものだという。あらゆる人に関わる問題だということを十分認識しなければならない。

 当然のことながら、子供にも深く関わっている。インターネット・ポルノは人々を罠にかける狡猾なビジネスである。彼らは、人々が一度引っかかってしまえば、そこから脱け出すのがどれほど難しいかを知っている。また、この習癖が外に表れることが少ない点が、問題への対処を一層困難にしている。

(2)防護対策ソフト
 子供や親自身が身を守ることができるように、私はユーザーに安全規則と防護対策ソフトについて教育している。この二つは同時に活用する必要がある。片方だけでは上手く機能しない。

 換言すれば、例えばあなたが子供に個人情報を他人に教えないように教育(安全規則の例については後述する)すれば、しつけの行き届いた子ならインターネットで問題を起こしたりはしない…。果たしてこれは本当だろうか。前述の統計を思い起こして欲しい。4人に1人の子供が偶然にポルノ画像を見ているのである。5人に1人の子供が執拗な性的誘惑を受けているのである。従って、単に良い親であり、良い教育をしようとすること、安全な場所にいることだけでは不十分であり、より具体的な何らかの対策が必要である。すなわち、技術的対策を施さなければならないのである。

 このことは、学校にも図書館にも言える。家庭で子供を守るために十分な対策を講じているのに、彼らが公立図書館や学校でこの種の画像を見たりするようなことがあれば、親としてこれほどやりきれないことはない。しかし、現実にはそれが頻繁に起こっているのである。

 「ファミリーPC」誌は、2000年8月にある調査を行った。それによると、父母たちの2人に1人は防護対策ソフトを使用していない。ルール(規則)とツール(防護対策ソフト)を同時に利用する必要性を理解していないことが、その理由である。一年前に、「危険なアクセス」と呼ばれる調査が実施された。この調査では、約2000カ所の公立図書館のコンピューター端末におけるポルノ画像へのアクセスについて調査が行われた。以下は、明らかになった数字の一部である。

 子供がポルノ画像にアクセスしていたとの報告件数、あるいは保護者から苦情があった件数は、合計で472件であった。大人がアクセスしていたとの報告件数はその二倍(962件)である。大人が子供にポルノ画像を見せていたとの報告件数は106件。こうした数字が果てしなく続く。これらは、僅か2000カ所の図書館に関する情報である。しかし、全米の公立図書館で約8200万件のインターネットへのアクセス件数があることを考慮すれば、その数字は年間40万〜200万件の間であると推測される。これは重大な問題である。

 現在、防護対策技術を活用している図書館が増加しつつある。しかし、これまで激しい攻防が繰り広げられてきた。皆さんは、公立図書館においてこのような闘いがあったことをご存知だろうか。もし「ドクター・ローラ」のラジオ番組を聴いたことがあれば、恐らくご存知に違いない。すなわち、防護対策ソフトを利用しようとした図書館が、しばしば米国憲法修正第一条(表現の自由)を根拠にACLU(アメリカ自由人権協会)に訴えられているのである。

 つい2000年、マケイン上院議員が、我々が数年にわたって取り組んできたある法案の通過に協力してくれた。その法案は、学校や図書館がインターネット利用のために連邦政府からの補助金を受ける場合、何らかのフィルタリング・システムの導入を義務付けるものである。このことは、学校や図書館における防護対策ソフトの普及に大きな意味を持ち、インターネットの適切な利用を促進したと私は考える。現在、30〜50%の学校がフィルタリング・システムを導入している。

 そして、もちろん防護対策ソフトを使用すべきである。これは技術面における対策である。当然のことながら、技術関連の企業とはインターネット・サービス・プロバイダーや閲覧ソフトのメーカーなどであり、フィルタリング技術を開発する企業のことである。彼らは重要な鍵を握っている。例えば、私が過去何年か働いてきた組織では、プロバイダー企業に現在の法律を遵守させるよう努力してきた。つまり、児童ポルノを提供しないということである。しかし、驚くべきことに、この努力はあまり成功していないのが実情である。

(3)技術を利用した様々な対策
 市場では様々なタイプの技術を使ったツールが販売されている。初期のフィルタリングの形態は、既に時代遅れとなっている。現在のフィルタリング・システムと閲覧防止技術は、極めて高度である。実は、私は著書の中でこの分野について二章ほど費やしている。中でも、サーバーに基礎を置く解決策は、最も効果的である。

 サーバーに基礎を置く解決策の最初のバージョンでは、実際にソフトをコンピューターにインストールしなければならなかった。ソフトをダウンロードして使用しなければならなかったために、「マウス」と「モデム」の区別がつかないようなコンピューターに不慣れな父母たちにとっては、厄介であった。漫画のような話だが、小さな子供ジョニーがソフトをダウンロードして、親のインターネットへのアクセスを制限し、自分は自由に閲覧するということもあり得る。もちろん、その親は「これは凄い。何にも閲覧できないぞ」と言うのである。

 サーバーに基礎を置く解決策も今はとても良いものになっている。子供がごまかしたり、取り外したりできないように工夫してある。しかし、かなり以前から、インターネット上であるホームページが掲げられている。そのサイトでは市場に出ているほとんど全てのフィルタリング・システムを解除するコードが掲載されており、子供に解除方法を教えているのである。フィルタリング・システムを開発する企業は、極めて難しい課題を抱えているのである。私もそのような企業の一つと協力し、解除不能にするための手段を講じているところである。

 また、コンテント・レーティング(内容の格付け)は、現在欧州を起点として取り組みが行われている。しかし、実際に格付けが施されているサイトは12万件に過ぎない。従って、格付けされたサイトだけを閲覧するフィルタリング・システムやブラウザーを使用すれば、インターネットの利用がかなり限定されることになる。

 それではここで、ごく一部ではあるが、安全規則をいくつか紹介する。我々は同時に、父母たちが正しい選択をしている事実も数多く発見した。彼らが、専門知識がなくてもできることをやっているのは、実に好ましいことである。というのも、親が家庭で子供に身の守り方を教えれば、子供は外にいるときも自分で自分を守ることがより可能となる。

 父母たちにできる重要な事柄として、子供と一緒にインターネットを使うことが挙げられる。一緒に使ってみることで、子供のインターネット上のやり取りを共有することができるからである。親は子供のメール友だちや行動内容を把握しておくべきである。また、子供に決して個人情報を他人に教えないよう指導すべきである。ネット上の“捕食者”たちは、極めて狡猾である。

(4)子供の個人情報の流出を防ぐ
 私は一年半ほど前に「オプラ・ハンフリー・ショー」に出演する機会があった。その番組で、「サイバー・コップ」(インターネット警察官)が子供とやり取りをする場面があった。もちろん、子供はその相手がサイバー・コップであることは知らない。子供には絶対に他人に個人的情報を教えないようにと言い聞かせてあった。どこの学校へ通っているか、どこに住んでいるか、あるいは年齢、本名など、子供が普通に個人的情報だと思うような内容である。

 ところが、そのサイバー・コップが個人情報を聞き出す目的で巧みなトリックを使ったために、5分もすると、我々はその小さな男の子がいつの土曜日に、どこの町にあるどの映画館のどの座席に座ろうとしているか、正確に知ることができたのである。子供と一緒にこうしたロールプレイをしてみることは、大切である。子供には間違っても実際に相手と会ってはならないと指導しなくてはならない。皆さんも、それが現実に起こった多くの事件について、メディアを通じて聴かれたことがあるだろう。

 子供には、インターネット上で自分のことを語らせてはならない。例えば、チャット・ルームにおいてである。チャット・ルームは何かと問題の種となっている。“捕食者”は決まって、チャット・ルームに潜んでいるものだ。彼らは、どこか淋しさを漂わせ、何か心配事を抱えている子供がチャット・ルームに入ってこないかと、待ち構えているのである。例えば、親と喧嘩したり、ボーイフレンドやガールフレンドと別れたりした子供たちである。このような情況は“捕食者”にとって避雷針のようなものであり、見つけ次第すぐさま割り込んできて、子供の抱える悩みについて話し始め、耳を貸そうとするのである。

 “捕食者”は決まって自分の姿を偽り、チャット・ルームで子供の様子を窺っては、同じ意見を持ち共感を抱く人物であるかのように振舞う。そして、その子供と信頼関係を構築してゆく。やがてその子の信頼を勝ち取ると、今度は性的接触を目論み始めるのである。

 悲しいことだが、我々の発見ではこれらの子供たちの中でも、13歳から15歳の少女たちが犯罪のターゲットとなっている。しかし、前述のように、“捕食者”はインターネットを使用しているが故に、実際に面と向かって会う以前に子供に接触しているのである。少女たちはひとたび相手が大人であることを知ると、自分がその人物と恋愛関係にあると思い込んでしまうのである。このため、その人物を発見することは一層困難となる。

3.総合的対策の構築

 さて、自分自身や子供たちの身を守るために、問題のあるサイトやその他のあらゆる危険なサイトに接続しないための手段を講じたとしよう。それでは、インターネットでポルノをやり取りしたり、遂には実際の犯罪行為に至ったりするような人物から、どのように自分や子供を守ることができるだろうか。これは極めて困難な課題である。

 我々が現在抱えている公共の安全に関わる問題は天文学的であり、その実際の規模は今の子供たちの世代が成長するまで明らかにならないかもしれない。その最初の例が、マディー・クリフトン事件であった。私は一年半ほど前、マディーが遊び友たちに殺害された数カ月後に、彼女の母親に会う機会があった。当時マディーは8歳、ジョッシュは11歳だった。裁判の間、なぜジョッシュがそのような事件を起こしたのか、誰にも分からなかった。彼は素直な子供で、良い生徒だった。過去に友だちをいじめたりして、問題を起こしたこともなかった。

 ただ一つ分かったのは、マディーを刺すまでの20分間、彼がインターネットを通じて拷問のハードコア・ポルノを見ていたという事実であった。そしてマディーを殺害するまでの約6カ月間、この種のポルノを見続けていたのである。マディーの母親も私も、それが事件のきっかけだったと信じている。

 次に起きた事件では、13歳の男の子が図書館でポルノを見ていて、もっと幼い別の男の子の後をつけてトイレに入っていった。そして、その子に自分が今見ていたことを真似するよう頼んだのである。カウボーイごっこやインディアンごっこなども同じだが、子供は何かと真似してみようと思うものである。したがって、こうした問題について十分注意する必要がある。

 過去数年にわたって私の最大の不満は、米国の事例のように、現行の法律の執行に関する問題であった。前述のように、猥褻物が一度も取り締まりを受けていない。それどころか、ポルノ業界は2000年9月に関係者の大会を開催したのである。そして最初のセッションは、「民主党に投票しよう」という内容であった。これは大きな問題ではないかもしれないが、彼らは少なくとも、リノ司法長官時代には一つも取り締まりがなかったことを承知しているのである。我々は司法省に何もさせることができなかったが、彼らは民主党が政権を握っている限り、それが続くだろうと期待しているのである。

 しかし、ゴア氏とリーバーマン氏のこの問題に対する考え方を見る限り、私はそれも続かないだろうと考えている。ともかく、これは重大な問題である。警察は児童ポルノを捜査する術を持っていないのである。法の穴を塞がなければならない。

 大人にとっての表現の自由とされている内容を、子供から遠ざける仕組みがある。「児童インターネット保護法」(Children Internet Protection Act)は、前述のマケイン法案であった。今後ACLUが訴えを起こし、裁判による争いになると予想される。また、私が委員として参加する機会を得た児童オンライン保護法委員会(COPA Commission)では、スパムメール、詐欺的商法、マウス・トラッピングなどに対する新たな法律・規則を制定するよう議会に要請した。米国がもう少し一貫した行動をとるようになれば、この国の連邦政府、州、地方自治体の間だけでなく、世界中の警察関係機関の積極的な協力関係が可能となろう。

 つい最近、スウェーデンの警察が児童ポルノ業者の一味を摘発した。このグループに参加していた人々は、主にスウェーデン国内に在住していた。ところが、彼らが所持していた画像は、僅か2、3歳程度の幼い子供のものまであった。

 では、どうすれば子供や家族のためにインターネットをより安全にすることができるだろうか。それには、一般の人々、つまり我々一人一人と、技術を提供する企業、そして法曹界が責任を共有することである。まず我々の家庭から始めて、自分自身と子供たちを守らなければならない。このメッセージをより多くの人々に伝えることにより、我々の地域の学校や図書館を安全な環境にすることができるのである。適切な候補者に投票し、政治指導者に影響を与えよう。

 参考までに、これらの内容に関する多くの資料はインターネットなどで入手可能である。私が関係しているFamilyClickという会社では、非営利法人と協力関係を結んでいる。また、私の著書『キッズ・オンライン』やホームページ(http://www.protectkids.com/)などでも情報を提供している。

 最後に、我々はこれまで度々予防措置の重要性を訴えてきた。皆さんの知人の中にも、葛藤して今にも奈落の底に落ちそうな人がいるかもしれない。私のホームページでは、ポルノ中毒に苦しんでいる人々やその家族のための助言も行っているので、参照して欲しい。

(2001年1月26〜30日、米国・ニューヨークにて開催されたWCSF2001国際会議において発表された論文を整理した。)