東京大学名誉教授 山口彦之

世界は、20世紀の技術革新によって産業社会から情報社会に移行しています。物質的には大きな繁栄を築きつつある人類ですが,この変革はグローバル化して世界を覆い人間性を喪失させつつあります。それはまた道徳的規範をも崩壊させており,人間の精神的危機をも迎えているともいえます。21世紀の課題は,グローバル化した人類の諸活動について,共通 の倫理的ルールを確立するとともに,個々の国家や民族の多様性を相互に認め合いつつ調和のとれた関係をいかにして築くことができるかにあります。その根本には普遍的な道徳規範に基づく家庭基盤が堅固でなければなりません。

本会は会の発足以来,日本と世界が抱える諸問題の原因を探りながら,行くべき進路を提示すべく,政策指向の研究活動を展開してまいりました。国家目標の研究,グローバルな世界における目標設定から始まり,アジアと共に生きる日本としてのアジア研究を行なうと共に,社会の基盤を形成する道徳規範・価値の問題についても家庭の価値と関係させながら研究し各界に提言してまいりました。

このように混迷する状況の中で,大学人は本来の使命に帰って新しい変化の兆しに敏感でなければなりません。本会では,真の世界平和実現に向けて21世紀社会のあり方を考えながら,内外の現実的諸課題に積極的に取り組んでゆきたいと思います。過去の固定観念にとらわれない開放された国際的視野に立って,活発な議論が行われることを期待致します。