存亡の危機に立つ中東のキリスト教

 英国のシンクタンク,「キヴィタス市民社会研究所」(Civitas:The Institute for the Study of Civil Society)の最近の研究によれば(2012年12月),中東地域においてキリスト教が存亡の危機にさらされている(Christianity at Risk of Wipe-out in the Middle East)と,英国の「ロンドン・テレグラフ」が最近報道した。
 「キリスト教に対する嫌悪:攻撃される信仰」というタイトルの研究報告書は,キリスト教に対する迫害が世界各地で行われていると指摘する。一方,ある人々が問題提起する「イスラーム嫌悪(イスラーム恐怖症)」は,イスラーム優越者たちが懐柔策と脅迫を通してキリスト教をはじめとする非イスラーム信仰の人々を屈服させるために捏造されたものだという。
 キヴィタス報告書は,「世界の多数の信仰集団は,ある程度の差別や迫害を受けているという事実はよく知られているが,キリスト教が他の宗教よりもひどい攻撃の標的になっている点は,あまり知られてはいない」と説明した。

キリスト教誕生の地でも迫害と弾圧を受けるキリスト教徒

 同報告書によれば,世界のキリスト教徒の1割にあたる2億人余りが,信仰を理由として社会的な不利益や迫害,あるいは露骨な抑圧を受けているという。また中東地域の半数あるいは三分の二に当たるキリスト教徒は,20世紀に信仰を放棄したか,殺害されたという。
 マスコミ出身で現在オックスフォード大学ブラックフライアーズ・ホールの客員研究員として活動する作家ショート氏(Rupert Shortt)は,「この問題を提起し,対処することは,全世界の最優先の政治課題でなければならないということが,私の考えである」と語った。
 迫害の原因は,露骨的なダブル・スタンダードの適用である。イスラーム主義者たちと中国の共産主義者,およびその他の全体主義者は,キリスト教信仰を「野蛮なもの」として弾圧することができるという口実を事実上提供することがダブル・スタンダードである。西欧では,キリスト教信仰は天賦の自由として認められている。
 キリスト教の誕生したところでは,とくにダブル・スタンダードが,露骨に適用されている。ベツレヘムに居住する原住民のキリスト教徒たちの中には,生活が安全だと感じる人はほとんどいない。キリスト教徒の古代活動地域の一つであるイラク地域のキリスト教徒は,集団で避難して久しい。彼らの多くは隣国シリアに移住したが,強姦・拷問・殺害などの迫害を反政府軍から受けている。ちなみに,シリア独裁者アサド大統領政権と戦う反政府軍は米国の支援をも受けている。
 エジプトは,ムスリムによって征服される直前まで長い期間にわたりキリスト教国家であったが,現在もコプト教と呼ばれるキリスト教徒が相当数(人口の約10%)居住している。エジプトでは少し前にイスラーム法であるシャリーアに基盤を置く憲法を採択した。このような憲法が制定される前まででも,キリスト教徒たちは法的に二等国民の扱いを受けながら,無慈悲な暴力と殺人に悩まされてきた。キリスト教徒たちの事業体は破壊され,没収され,教会は火に焼かれた。
 それにもかかわらず,「西欧の政治家たちとマスコミは,人種差別主義という非難を受けるのではないかと恐れて,中東をはじめとする世界のキリスト教徒に対する弾圧に目をつぶってきた。彼らは人権というより広い概念を擁護する過程において,宗教の自由が“炭鉱の中のカナリア”となっているとの認識を持てずにいる」と同報告書は指摘する。

“炭鉱の中のカナリア”となった宗教の自由

 米政権は,キリスト教徒たちのこのような現状に目をつぶっている理由は,きわめて不吉な意図に根を持っているとみている。Phyllis SchlaflyとGeorge Neumayrが共同執筆した「オバマの“宗教の自由”との戦争」(Obama’s War on Religious Freedom)は,オバマ大統領の「イスラーム愛好」傾向とその他の信仰に対する敵対感情を詳細に説明する。彼らは,「オバマがキリスト教との戦争を行っている」と結論付けた。
 米国において論議されている移民法改革は,まず現在イスラーム信徒に与えられている「特恵」を再検討することから始めなければならない。実は,このような特恵によって,イスラーム優越主義を主唱するイスラーム聖職者たちの米国入国や,サウジアラビアの大学生たちの大量の米国留学が許されている。またイスラーム教徒に対する優遇的な難民地位の付与によって,米国移民を切実に必要とするキリスト教徒たちは,米国に移住することが事実上不可能になっている。
 イスラームを愛好し,キリスト教と戦争をやっているオバマ政権が,このような政策を自発的に変更する可能性はほとんどない。米国民と議会がこの政策を改革するように圧力を加える必要がある。

(Frank J. Gaffney, Jr. 米国安保政策センター会長,「ワシントン・タイムズ」2013年1月より)