左翼の巧妙な用語変更戦略

 英国のサッチャー元首相はかつて,「社会主義者たちは,自分たちの信念に対する新しい名称を探すことに多くの時間を費やす。なぜなら,古臭くなった名称は,あまりにも早く時代から取り残され,不信を買うためだ」と語った。「鉄の女」と言われたサッチャー女史のこの言葉は,至極当然のことを言っている。
 米国の民主党左翼勢力は,自分たちの政策と関連する用語を巧妙にすげかえる。世論や事実が自分たちの主張とかけ離れてくると,彼らは演説,記事,テレビ出演などを通して,新しい語彙(用語)を使い始める。左翼の人たちは,蛇が脱皮して殻を脱ぐように,使用するのに不都合になった用語を捨て去ってしまう。ところが,共和党の人々は左翼の使い始めた新しい用語をそのまま受け入れて使ってしまう。これは誠に理解しにくいことだ。このような“模倣”は自分も知らないうちに,左翼の大義名分を宣伝してやることになるのだ。
 例を挙げてみる。左翼は,自由民主主義と進歩を意味する「リベラル」という単語が肥大していき,市民生活に干渉する政府と米国をまず批判する外交姿勢および被害者優先の社会福祉計画を意味するようになったことを悟っている。公職選挙候補に「リベラル」として烙印を押した場合には,しばしば敗北を保証することになる。そうしてリベラルな人たちは,今度は「進歩主義者」を自称し始める。誰でもよいと思う「進歩」の方が,「リベラル」といわれるよりも非常によい印象を与えるからだ。
 保守を擁護する人々が,左翼のこのような“言葉遊び”を無心になって(結果として)手助けていることは,実に怒りが込み上げてくるほどだ。公職者や専門家として活動する右翼の人たちの中には,あまりにも多くの人たちが左翼勢力が投じた“エサ”にぱっと飛びついて,左翼勢力を「進歩主義者」として呼び始める。このような習慣は,非生産的だ。保守派は,左翼を「進歩主義者」と呼ぶことをすぐにでも止めるべきだ。
 ところで,地球平均気温が1997年以降上昇してない事実に対して,米国立海洋大気局の観測衛星が確認するや,リベラルな人々は,騒がしく主張してきた「地球温暖化」宣伝を中断した。それに替えて彼らは「気候変動」という言葉を使っての警鐘を鳴らしている。2013年5月下旬に米国ニューヨーク北部に1メートルに及ぶ降雪があったとき,これが「地球温暖化」とは距離が離れているように見えたので,リベラル派の専門家たちは,これを「気候変動」として説明した。
 左翼の新しい用語「気候変動」をオウムのように繰り返すオバマ大統領のような地球温暖化理論支持者たちを,無意識のうちに後押ししている右側の人たちはあまりにも多い。右側の人たちは,いわゆる「地球温暖化」という言葉に引き続きかみついて追及していくべきだ。実際の観測結果とそれから外れた環境保護主義者たちが過去に主張したこと,すなわち地球が引き続き温暖化しているという理論を証明しろと圧力をかけなければならない。
 米国・民主党の人たちが,政府の割引購入券制度を擁護することは最近少ない。この用語は,なぜか色あせた福祉国家の匂いを漂わせている。そこでオバマ大統領とその追従者たちは,この制度の元々の名称を「補助栄養支援プログラム」に替えた。この新名称は,楽しく爽快な感じを与えてくれる。保守陣営が,この用語を深く考えずに彼らの主張にまかせて使うことは止めるべきだ。
 オバマ政権成立後,この制度の恩恵を受ける人が急増し2009年1月に3220万人だったものが,2013年4月には4750万人に膨れ上がった。この制度の新名称は,政府の食品支援に対する好感をより高くし,増加を抑制するのが困難だ。
 人類が息をするときに出す炭酸ガスは植物の生長を助ける機能を持つ。それゆえオバマ大統領は,炭酸ガスを攻撃する代わりに,今は「炭素汚染」を批判する。炭素汚染は,黒い煤が空を覆うことを容易に連想させる。オバマ政権の予算支出“中毒”が国の財政を危機に陥れているが,オバマは自分の“中毒”を「投資」だと称賛している。ゆえに,進歩主義者たちが気候変動に反対し,食品割引購入券に対する投資を増やそうとするとき,保守主義者たちは,その用語変更が地球温暖化主張の継続であり,政府の福祉予算支出増大化の要求に過ぎないことを悟り,拒否すべきである。
(コラム:ドロイ・モドック・米フーバー研究所研究員・「ワシントンタイムズ」2013年8月より整理して引用)