暗澹たる“明日”のロシア

 ロシア連邦は,社会的および政治的大変動期に急速に遷移しつつある。この大変動は,20年前,旧ソ連の崩壊に次ぐ大きな変革となるに違いない。いまロシアを襲いつつある危機は,次の三つの趨勢が相互に絡み合って進行している。
 まず,ロシアは「死につつある」。ある一時期超大国でもあったロシアは,旧ソ連崩壊後,災難のような衰退局面を経験している。例えば,衛生水準は最悪で,平均寿命は西欧諸国とは異なりかなり低く,男性はボツワナやマダガスカルより低い60歳程で,女性はサウジアラビアとほぼ同じ73歳だ。ロシア社会の深刻な問題であるアルコール中毒は,国を荒廃に陥れているが,青年の死亡率は欧州より35倍も高い。
 また国民の欧州およびその他の地域への移民流出と死亡の二つの事由をあわせると,国の人口が毎年50万人ずつ減少している。この率で推移するとロシアは,今世紀中葉には四分の一の人口を失うだろうとロシア政府は推計している。これは人口学者がいう「ロシアの空洞化」現象だ。すなわち,ロシアの人的資源が総体的に内部破裂を起こし,維持可能な現代国家の展望が崩れつつあるということだ。
 別の面から見てみると,ロシアは人種および宗教の構成においても,急激な変化を経験しつつある。ロシアの2100万人に及ぶムスリムは少数民族だが,しかし比較的良好な出生率によって今後10年以内には,ロシア総人口の五分の一を占めるだろうと予測されている。さらに今世紀半ばには総人口のマジョリティーになる可能性もある。このような人口革命は,ロシアの性格を根本的に変えてしまいかねない。
 最後に指摘すべきは,大量の中国人のロシア流入だ。過去20年間にロシアのウラル山脈以東人口は,五分の一に減少して,現在2500万人程度だ。人口密度は,1平方キロメートル当たり6人だ。このような人口減少は,シベリア地域の豊かな天然資源に対する戦略的な競争を先鋭化させている。エネルギー源不足に悩む中国は,この地域(シベリア極東)を次第に蚕食しつつある。このように展開しつつある競争の中で,経済と戦略の両面において世界の新興大国中国が,ロシア経済に重要なシベリア極東地域の支配権に挑戦する可能性がある。
 このような人口学的変化と宗教的な変化,および外部の圧力によって招来されるであろう“強烈な暴風”が,ロシアの国内政治と世界の構造,未来の戦略的なプライオリティを決定していくだろう。いろいろな経済・社会指標を見る限り間違いない。明日のロシアは,今日のロシアとは根本的に変わったものになっていることだろう。
(イラン・バーマン米国外交政策評議会副議長「ワシントンタイムズ」論評より,2013年11月)