難民流入に悩む欧州諸国―難民数が戦後最大に

 国連は,14年8月,イラクに「レベル3」の非常事態を宣布した。イラクがスンニ派武装勢力「イスラーム国」のテロ・暴力によって犠牲者や避難民が急増したために,国連と関連機関が最優先課題として「人道主義的危機」に直面しているためだ。これによって「レベル3」が宣布された国家は,シリア,南スーダン,中央アフリカ共和国を含む4カ国になった。レベル3は最高レベルの非常事態であり,救護物資など人道的支援がなされる。
 国際貧民救護団体オックスファームの米国支部のノア・ゴットシャルクは,米外交専門誌Foreign Policyに寄稿し,「人間が作り出した危機がこのように同時多発的,広範囲な規模で進行することは,全く見たことがない」と述べた。国際非営利機構経済・平和研究所(IEP)が去る6月,162カ国を対象に「世界平和指数」を付けた結果によれば,「どのような種類の葛藤にも関係していない国は,スイス,コスタリカなど11カ国だけだ」という。

 国際社会は今年(2014年),「不名誉な里程標」を一つ付け加えた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は,6月20日に「世界難民の日」を迎えて発表した世界の動向レポートによると,2013年末の段階で,世界の難民数は前年度より600万人増えて5120万人になった。第二次世界大戦以降,最大の数字だ。最近の紛争地域の攻撃対象は,民家,医療,救護施設などを区別せずになされている。これが民間人犠牲者と難民数が急増する理由だ。難民数増加の最も大きなのはシリアの内戦に伴うものだ。イスラーム国が猛威を振るっているところでは,2011年3月以来2014年4月までに死亡者が19万1000人,避難民が680万人に達する。
 レベル3の国家は,主として中東,アフリカ地域の集中している。大部分の難民は,イラン・ヨルダン・レバノン・トルコ・ケニア・エチオピアなどの隣接国を行き先としているが,これらの国家の難民収容所もすでに飽和状態を越えて久しい状態だ。余力のある人々は,欧州に向かう。生命を懸けてボートに乗って欧州に辿り着いた中東・アフリカ難民のうち,海上で命を落とした人は過去20年間に2万人を越える。アフリカの難民は,スペイン国境を超えて欧州への入国を試みる。密入国を防ぐために設けられた6mのフェンスを越えて,難民ブローカーの手助けを借りて,車両のバンパーに空間を設けてそこに隠れて入国するのだ。このように危険千万の欧州進出ラッシュが続く。UNHCRは「人道主義的惨事が憂慮される」と警告する。

 国際救護団体はこのような同時多発的な紛争を前にして限界を吐露する。一例としてあげれば,「慈善軍団」(Mercy Corps)が3年間にわたって集めたシリア内戦救護基金額は,昨年フィリピンが台風被害を蒙ったとき,たった4日間で集めた金額より少ない。救護団体関係者は,「人々は人間が作り出した危機,政治的紛争に寄付することを避ける傾向が見られる。現在のような未曾有の危機が与える負担感とスタッフの力量,募金不足によって対応が難しい現状だ」と吐露した。政治的な解決策が唯一の代案であるという意味だ。
 オバマ大統領就任以降,国際問題への介入に消極的な「新孤立主義」を固守してきた米国は,その路線変更を模索する雰囲気に注目する。米ヘーゲル国防長官は,「シリア攻撃を含むあらゆるオプションが議論に上がっている」とし,積極的な介入を示唆している。これに先立ってクリントン前国務長官は,「イスラーム急進武装勢力がはびこったのは,オバマ大統領の外交政策の失敗だ」と強く非難した。
 一方,欧州各国の立場でも,中東・アフリカの難民問題は他国の問題では済まされない。地中海,エーゲ海を経て欧州に入ってくる難民数が幾何級数的に増えており,とくにイタリアとギリシアが頭を抱えている。EU国境管理庁によれば,2014年1月−4月に地中海経由で欧州に入った難民は,4万2000人に達する。前年同期に比べ,約10倍に膨れ上がった。
 国境監視と難民救助作業にかかる費用も大きく,財政赤字に苦しむこれらの国にとっては大きな負担だ。EU執行委員会が2013年秋に海上難民救助のための監視網を稼動させた後,イタリアは現在(2014年8月)までに地中海において3万人の難民救助をしたが,このための費用は毎月約900万ユーロに上っている。
 イタリア国内からは,ポーランドに位置するEU国境管理庁をシチリアに移し,難民救助作業を専門に担当してほしいという声が起きている。しかしEUは「予算も少なく,国境守備隊はもちろん,航空機や船舶など適当な手段もない。EU加盟国がすべての国境においてさらに多くの役割をすべきだ」と拒否する態度を示した。
 難民問題は,南欧州,西・北欧州国家間の葛藤にも飛び火する情勢だ。南欧州諸国は,地理的な位置の理由から難民の流入に対処する負担を自分たちが全的に負っていると不満を述べる。一方,ドイツなどは,逆に南欧州諸国が難民収容問題を西・北欧州諸国に押し付けていると批判する。ドイツ・バイエルン政府は,8月22日,「イタリアがわざわざ不法移民者データを確保しながら,指紋取得をしていない。難民は最初に入国した国に留まるべきだというダブリン協定を守るべきだ」と述べた。
 これは2008年金融危機以後,EU各国の経済の落ち込みとあわさり移民排斥の主張を展開する極右政党の躍進と連結している。2014年5月,欧州議会選挙の最大の勝利者として評価を受けたフランス国民戦線は,年間移民者数を20万人から1万人に減らすという公約を立てている。また外国人追放などを公約にしたギリシアの政党も躍進している。
(韓国『世界日報』2014年8月25日付より)