北東アジア時代の開幕と韓日関係の新パラダイム

A New Paradigm of Japan-Korea Relations Towards the Era of Northeast Asia

黄善祚(生活政治アカデミー理事長)
Sun-jo Hwang

 

<梗概>
 今年2010年は韓日関係史において重要な節目の年である。日本による韓国併合から100年目を迎えて,文化交流や経済的な関係からみると韓日関係は依然と比べ格段に良くなっているが,歴史問題や政治面では両国民の心の隔たりは大きい。近年の韓中日3カ国間のさまざまな民間レベルの文化的社会的交流が活発化することで,そうした心の壁が低くなることは実証されているが,それ以外においても日本が果たすべき主導的役割は大きいと思う。それによって3カ国間の真の信頼関係が醸成されれば,東アジアの未来はさらに確固たるものとなると思う。

 2010年は,韓国が日本に併合されて100年になる意味深い年である。とくに8月は,韓国と日本にとって,併合と解放の記憶が共存する月である。すなわち,1910年8月22日に韓日併合が締結され,1945年8月15日に韓国は日本から解放された。
 このたびの国際会議は,韓国と日本が抑圧と抵抗,葛藤と分裂の一時代を終え,和解と平和の新しい時代を開くために,韓日の政治にかかわる人々が集まって開かれたものである。冷戦後の世界にあって,グローバル化の波は北東アジア時代の開幕を予告しており,韓日両国の新しいビジョンと選択を期待している。
 今から100年前,韓国と日本は歴史的変化の波の中にあった。西洋列強の荒々しい挑戦の中で,日本はアジアで先駆けて近代化を成した一方,韓国は主体的にこのような流れに対応することができなかった。日本は西洋列強の進出にならい大日本帝国のビジョンを立てて大陸に進出し,その通り道にあった韓国(朝鮮)を侵略したのであった。
 日本は韓国人の意志とは関係なく,武力を先立てて「韓国併合ニ関スル条約」を締結し(1910年),以後,植民地支配36年の間,韓国の人命と財産を奪い,韓国の言語と文化を抹殺するなど韓民族に多大な苦痛と傷を与えたのである。
 解放後,1965年に韓日国交が正常化され,経済大国として成長した日本と廃墟の中から再び立ち上がった韓国は,近年非常に緊密な経済関係を維持している。文化的交流もそれに劣らず活発で,とくに若者の間では両国に対する否定的な認識が目立って減っている。
 しかし全般的に見ると,両者の心の距離は依然として狭まっているとは言い難い。例えば,政治面においては,従軍慰安婦問題,教科書問題,竹島/独島領有権問題など潜在する葛藤要因が繰り返し露呈している。経済など外的関係は徐々に拡大しているとはいえ,根深い傷と不信のために真正な国民的和解と協力はいまだはるかに遠く見えるのが現実である。

 北東アジアの新しい未来
 かなり以前より未来学者たちは,21世紀は環太平洋時代になるだろうと予言していた。例えば,『メガトレンド』『メガトレンド・アジア』等の著者ジョン・ネイスビッツ(John Naisbitt)は,「21世紀は環太平洋時代になる」と予測した。すなわち,産業革命以後の250年は,ヨーロッパ西部海岸と米国の東部海岸の間で文物が往来しながら,世界の経済成長を主導した「大西洋時代」だったとすれば,2000年代は米国西部海岸と北東アジアの国々が世界の経済成長を主導する環太平洋時代になるだろうと述べた。
 彼の予言通り,2000年代のヨーロッパ経済は全世界の28%以下に低下する一方で,東アジアの経済は27%以上で継続して成長している。とくに韓国・中国・日本3カ国のGDPは,全世界のGDPの17%に至り,2025年には中国のGDPが世界の25%を占めると予想されている。北東アジアの経済が爆発的な水準で成長しており,名実共に世界で経済的に最も躍動的に発展している地域といえる。
 急変する世界秩序の中で北東アジアの位相は経済発展だけではない。北東アジアは悠久なる儒教文化の伝統をもっており,西欧の個人主義とは違い共同体の価値を尊重し,家庭の安寧を生活の中心とする生の様式を維持している。経済全般を無条件に市場に任せず,国家が金融と産業の調律師の役割をしながら,時には市場の野蛮をてなづけて,不足ながらも疎外階層を抱える役割を担当した。このように東アジアの成長モデルを追求できたのは,北東アジア地域の精神的,文化的伝統によるものだった。
 「冷戦時代」が終結したとはいえ,北東アジアは依然として冷戦の最後の犠牲物である南北分断が維持されており,ここを接点に海洋勢力と大陸勢力の影響力が直接にぶつかっている地域である。中東を除けば,北東アジアの安定と平和は世界平和の試金石であると同時に完成だといっても過言ではない。
 北東アジアの域内協力と相互関係は時間とともに強化されている。すでに韓国,中国,日本の北東アジア3カ国の域内貿易は,全世界貿易量比で輸出が19.5%,輸入が25.8%をそれぞれ占めている。
 純粋貿易量の問題だけではない。韓国,中国,日本3カ国は他国がなければ持続的な経済成長が不可能なほどに密接な分業体系をなしている。韓国は日本の精密機械と部品産業の助けがなくては,電子産業や半導体産業を維持・発展させることはできない。機械,自動車,その他の消費財分野で韓国の技術移転と協力なくては,中国経済が少なくない困難に処しうるのだ。中国の安価な消費財の供給がなければ日本の消費者は高物価のために苦痛を受けるだろう。
 韓国で勉強している外国人留学生の現況を見ると,中国人留学生が全体82000人の76.9%に当たる63000人に達している。反対に,中国内の韓国人留学生数も全体外国人留学生の38%で最も多い。日本の外国人留学生数でも中国と韓国が並んでそれぞれ1位,2位を占める。今年上半期に韓国に入国した外国人総数365万人のうち日本人が145万人で1位,中国人が75万5000人で2位を占める状況だ。
 すでに北東アジアは,経済,安保,文化すべての面で相互密接な関係を結び,世界の新しい中心として浮上していると言っても過言ではない。

 北東アジア共同体のための課題と限界
 韓中日3カ国共同体に関する議論は,すでに150余年前から起きている。1869年,岩倉具視は,韓国と中国を日本の「よき隣人」として,韓中日連帯を模索することが日本がとるべき国家の進路の根本だと闡明した。
 安重根義士もまた100年前,伊藤博文を狙撃した後,監獄で「東洋平和論」を執筆した。「東洋平和論」で安重根義士は,西洋の侵略と領土拡大を批判しながら,東洋の韓中日3カ国の相互主権を認めて平和的共同体をなそうという平和思想を説破したのである。
 また韓中日3カ国に東洋平和協議体を構成して,共同銀行を設立し共用貨幣を発行すると同時に,共同平和軍と大学を創設しようとし,東洋平和のビジョンを具体的に提示した。
 このような安義士の東洋平和思想は,軍事と経済統合を含んだ地域共同体構想で,今日の欧州連合(EU)と似た概念である。すでに100年も前に時代を先取りしていた卓見であったといえる。
 北東アジア共同体のビジョンは輝いているが,現実はそれほど明るくはない。過去の陰が残っているからだ。
 去る8月10日,菅直人総理は韓国併合100周年を迎え,未来指向的な韓日関係のために談話を発表した。菅総理は,韓国併合が韓国人の意思に反して強制的に行なわれたことを認め,植民地支配の損害と苦痛に対して痛切なる反省と謝罪を表明した。
 しかし,韓国民はことばより実践が重要だとして,談話内容の真正性を疑った。1995年に村山総理が謝罪談話を発表し,2005年には小泉総理も謝罪したのであるが,靖国神社参拝など何らの変化がなかったからである。さらに日本の保守勢力は,菅談話の内容を批判した。
 もう一つ指摘しておきたいことは,韓半島平和のための日本の役割である。韓半島平和の保障なくして北東アジアの真正な和解と協力について語ることができないからである。日本が韓半島の平和定着のために積極的な姿勢で協力するなら,南北関係の進展はもちろん,北東アジアの平和にも大きく貢献することと思う。

 北東アジア時代のための民間次元の協力
 いまや北東アジア時代の開幕のための国民の出番である。これまで韓中日関係は,政治外交領域で政府レベルでの議論が多くなされてきた。1965年に韓日国交回復が成ったが,政治次元の利害関係による修交であり,国民間の和解はなかった。いまこそ国民的和解と協力のために民間レベルの努力がなされるべきだ。
 各国の政治的利害関係を越えて北東アジア国民間の和解と協力が成り立つとき,真正なる北東アジア時代が開幕するだろう。北東アジアの平和は戦争やテロがないだけで成り立つのではない。軍事的意味の平和維持以外にも,多方面での交流と協力がなされなければならず,北東アジア共同体に対する各国国民の共感帯と国民間の友好が増進する必要がある。

 EUがたどった道
 未来指向的な韓日関係,ひいては真正なる北東アジアの和解と平和のためには,まず歴史的過誤に対する日本の心のこもった謝罪が先行しなければならない。EUがたどった道は,北東アジア共同体のために示唆することが大きい。
 ドイツは機会あるごとに,ヨーロッパの国々に謝罪と賠償を惜しまなかった。とくに1970年代,西ドイツのビリー・ブラント首相は東ヨーロッパの各社会主義国との和解と親善のためにポーランドを訪問,ナチの犠牲者記念館で雨の降る中ひざまずいて謝罪した。心のこもった謝罪にポーランド国民の心の扉は緩み,ドイツはヨーロッパ内の信頼を回復することができた。
 日本もより積極的な姿勢で過去問題を解決し,周辺国から信頼を回復するために努力しなければならない。そのような意味で,今回の菅直人総理の未来指向的な談話は肯定的であり,より積極的な実践につながると信ずるものである。そうでなければ,北東アジア共同体の協力は,経済的,物質的な次元でのみなされ,潜在的葛藤は継続することだろう。

 韓日海底トンネルで北東アジアの基礎建設
 ドイツの反省を通じた信頼回復と同時に,EU形成に決定的な役割を果たしたのはユーロトンネルであった。ユーロトンネルは,英仏両国はもちろん,EU各国との空間的ネットワークを通じて実質的な欧州統合に大きく寄与した。
 韓日トンネルもまた,いかなる外交辞令よりも確実に北東アジア共同体の和解と協力関係を構築することができる平和事業であると同時に,100年後の北東アジアの未来のための長期的な基盤事業である。韓日トンネルは,北東アジア3カ国のみならず欧州とロシアまで連結する世界の出発点なのである。
 日韓トンネルは,もともと1981年ソウルで開催された第10回科学の統一に関する国際会議(ICUS)において,世界を一つにつなぐ国際ハイウェイ構想の一環として,文鮮明総裁が提唱したものである。その後1983年に,日本で日韓トンネル研究会が設立され,海底地質調査と技術的検討を遂行した。九州の唐津には400メートルの調査斜坑が掘られている。これが完成すれば,韓日両国はもちろん北東アジア共同体を作る起爆剤となることが予想されながらも,なかなか進展のない現状である。
 この事業の推進には,技術的問題,工事費などの費用の問題解決の前に,韓日両国民が北東アジアという未来のビジョンを共有し,国民的合意が先行する必要がある。韓国国民の一部には,「日本の大陸進出の足場の役割をするだけだ」と北東アジアの平和理想についても共感できない人がいることも事実である。このような不信を解消して両国民の和解と協力の道を開くことが重要である。
 同時に,韓日トンネルは韓半島の南北鉄道連結の必要性と効用価値を高め,韓半島の平和にも寄与する付随的効果を期待することができる。いまや韓日トンネルは,両国間の信頼構築,平和保障という次元で積極的に推進されなければならない。
 さらに韓国と中国の貿易量が増加する中で,それに伴う効率的な物流システム構築方案として,韓中海底トンネルに対する議論も始まっている。韓中海底トンネルを経済的物流システムのレベルだけで理解するのではなく,日韓トンネルとあわせた北東アジア共同体の発展と平和の象徴的な事業基盤であると理解し,未来指向的な関係構築のための核心事業として,韓中日の3カ国政府レベルで推進していく必要がある。

 韓中日平和祝祭で国民的和解を
 韓中日海底トンネル建設は,韓中日国民の心がつながるときに成り立つ事業である。相互信頼と尊重の大きさに比例してその可能性も大きくなるだろう。ゆえに,ここに北東アジア共同体を成しうる「韓中日平和祝祭」の開催を提案しようと思う。
 毎年,韓中日3カ国の地域を循環しながら,韓中日平和祝祭を開催すれば,民間交流の場として定着するだろう。最近の統計を見ると,文化交流を通じて韓中日の友好的な国民感情が増加している。
 2009年日本・内閣府の調査によれば,日本国民のうち韓国に対して「親しみを感じる」と回答した人が63.1%に達しており,前年より6%増加し,78年の調査以来最高値を示した。このように日本国民が韓国に対して親しみを感じるようになったのは,2000年以降韓国ドラマや映画が日本に紹介され,韓流ブームの風に乗って変化が起こったのだろうと思う。
 このような日本の変化は,韓国国民の反日感情にも影響を及ぼしそれが緩和しつつある。コリアリサーチセンターの調査によると(2009年),韓国国民の反日感情が2005年の63.4%から2009年には35.9%に減少した。両国間の文化交流を通じて肯定的な感情が増加し,否定的な感情が減少しているのである。
 ドラマ,歌謡,映画などの文化を通して自然に両国民の友好が育まれたとすれば,民間交流を通じて具体的な友好関係を形成しなければならない。
 韓中日平和祝祭は,韓国の道と日本の県,中国の省が姉妹提携を結び,祝祭期間中に姉妹提携地域の住民たちが祝祭開催国でホームスティをすれば,国民相互間で心の輪を広げることができるだろう。また,祝祭期間中に現地の観光地を訪問して各地域の特産物を交流すれば,地域経済活性化と民間交流増進にも大きく役立つと思う。
 ひいては,韓中日地域間の恒久的な平和定着のために,韓中日間の結婚を奨励しなければならない。韓中日間の国際結婚は毎年増加している。日本の法務省の出入国統計を見ると,2006年に韓国人と結婚移民した日本人が6546人,中国人が20485人であったが,2010年には日本人10099人(54.3%),中国人34303人(67.5%)にそれぞれ増加している。
 国境を越えて結婚した家庭は両国間の平和をなす基地のようなものだ。このような家庭で生まれた子どもたちは,北東アジアの平和を担うグローバル・リーダーとして永遠な平和を牽引することだろう。韓中日平和祝祭で,韓中日国際結婚をした家庭が主導的な役割を果たす開かれた場が作られれば,国際結婚の評価が高くなり,多文化家庭に対する認識を新たにすることができるだろう。

 平和のパラダイムで北東アジア時代を拓く
 グローバル化していく国際環境は,北東アジア平和時代の開幕を予告している。韓国と日本が過去を清算し,今後の北東アジア平和100年を牽引することのできる協力関係を形成しなければならないときを迎えた。
 北東アジアの経済的ダイナミズムの上に,経済大国日本の底力と世界第10位規模の経済成長をなす韓国の熱情が加われば,21世紀の北東アジア共同体は世界を導く軸となるだろう。いまこそ,北東アジアの時代のために新しい韓日関係を定立しなければならない。韓日間の平和ビジョンを樹立し,過去を清算して信頼を回復した基盤の上に,韓半島の平和と北東アジアの平和のための協力事業を推進していくならば,葛藤と対立を超えて両国共同の繁栄と平和の新しい時代が開かれていくことだろう。
 韓日間の共生・共栄の平和のパラダイムは,北東アジアの平和はもちろん,世界平和を導く原動力となると信ずる。

(「世界平和研究」2010年秋季号No.187より)