スピリチュアル時代を開く

加藤栄一(筑波大学名誉教授)
Peter Eiichi Kato

 

はじめに
 PWPA(世界平和教授アカデミー)は,シンクタンクとして発展したいという願いを永年もっていた。私自身,シンクタンクの仕事をした経験もあることから,シンクタンクとして確立したら力を貸そうかとも考えていたが,最近ではそれ以上に自らシンクタンクの指導者として力をいれるべきではないかと思うようになった。
 シンクタンクにとって最も重要な「資本」とは何か。それは,Questions well put are half solved.(うまく出された問題は,半分解けている)と言われるごとく,「問題」である。うまく定立された問題を提起すれば,企業や政府は資金を提供するだろうし,関心のある学者・研究者は集まってくる。つまり,お金も知恵も問題をもとに集まってくるのである。だから,私は,まず良い問題を提出しよう。
 また,会員と執行部(経営陣)の関係を考えたときに,執行部は会費に見合うサービスを会員に提供しているだろうかと反省してみた。会員への真のサービスとは何か? 自分の経験に照らし合わせて考えてみても,同じ仲間との協働のおかげで自分の志が遂げられたという歓び,これこそが最高のサービスであろう。さらに仲間と会って議論する中で,自分の精神(知と霊)がエンハーンス(高揚)された歓びもあるだろう。一つひとつの会合ごとに,視野が開けて元気が湧く会合を提供すること,これらは大きなサービスと言えよう。単に事務的な報告を聞くだけであれば,遠方から集まって時間を費やすのは惜しいことである。
 ここで,本題に関連する私のこれまでの続き具合を簡単に述べてみる(表参照)。2008年に「知主霊従から霊主知従へーPWPAの新しい方向」の話をして以来,だんだん発展して今回の内容に至ったのである。

 次に,現代がどのような時代かについて簡単に見ておきたい。
 私の大学時代の寮の少し後輩(東大理学部卒)は小学校6年生の孫がいるのだが,彼(孫からみれば祖父)が勉強を教えているという。その子どもは東京で受験エリートコースに乗っており,小学校6年生で勉強している程度がすでに普通の高校生レベルに達しているという。祖父が教えられないくらい難しい宿題が山のように出る。しかし,そのためにプロの家庭教師を雇っており,その費用は時給8000円,月30万円もかかっている。そのような現実を見ながら彼は,「このような子どもの脳は将来どうなるのか?」と心配して,私に尋ねてきた。
 そこで私は,韓国を見よと言った。韓国は日本以上に熾烈な競争社会である。その結果,どうなったか。最近の調査によると,韓国成人の14.4%が精神疾患にかかっていることが明らかになった。そこで韓国政府は,2013年から全国民を対象に一生涯に19回のメンタルヘルス検診を行なうことにした。
 一方,日本も現在,同様の厳しい現状に直面している。すなわち,ひきこもり70万人,自殺者年間3万人,生活保護受給者210万人である。
 これは一体どういうことなのか。人間は,基本的に「体」「知」「霊」から構成されているわけだが,「体」「知」は充足過剰な状態にある一方,「霊」(霊性)は不足状態だ。「霊性」充足への渇望が,意識的にか,あるいは無意識的にか,強くある。

1.スピリチュアル時代とは?

(1)定義
 スピリチュアル時代とは何か? スピリチュアルは「霊性」と訳すことができよう。スピリチュアル時代については,次のように定義することができる。
 それは霊性の興隆する時代である。人々の霊的欲求が高まり,霊的指導者を生み出し,その霊的感化を受けて民衆が大きなうねりとなって世を動かし,政治運動をともなって変革を生む時代である。経済・社会の困難にもかかわらず(あるいは,それ故にこそ)霊的に豊かな時代である。
 宗教は,近代国家においてだいたい脇役であった。しかし,これからは「宗教が主役になる時代」ということができる。
(2)人類史上の実例
 人類史上にスピリチュアル時代は何回かあった。その中でも顕著な例を次に掲げる。
?イスラエル民族40年歴程(モーセ:前14〜13世紀)
 モーセが指導しながら砂漠を40年にわたりさまよい,その間にモーセは神と出会い,旧約聖書の主要部分が完成した。
?大乗仏教運動(釈尊:前6〜4世紀,龍樹(ナーガジュルナ):2〜3世紀)
?和イズムと鎌倉仏教(聖徳太子:6〜7世紀,聖武天皇:8世紀,源信:10〜11世紀,法然:12〜13世紀,親鸞:12〜13世紀,日蓮:13世紀,道元:13世紀)
 聖徳太子の「和を以て貴しとなす」を始めとする日本の思想が和イズムである。聖武天皇は奈良の大仏を造った。源信は「南無阿弥陀仏」を唱えた。法然,親鸞,日蓮,道元などは鎌倉仏教の大運動を唱導した。
?イスラームの興隆(ムハンマド:6世紀ごろに中東地域)
?宗教改革(ルター:15〜16世紀)
?アメリカ建国(ピルグリム・ファーザーズ:17世紀,ジェファーソン:18〜19世紀)
 ピルグリム・ファーザーズは迫害を逃れてメイフラワー号に乗ってアメリカ大陸に到着した。そしてジェファーソンを中心とする建国の父たちが国造りを行なった。
 これから日本にも,スピリチュアル時代が興ることは,十分に可能性があると思われる。

2.スピリチュアル時代の妨げ

 スピリチュアル時代の到来の可能性が展望される中,その妨げとなる要因がいくつかある。
(1)学界の毛嫌い
?無神論自然科学(デカルト=精神と物質の二元論,カント=不可知論)
?マルクス主義唯物論の全学問支配
?「価値からの自由」社会科学(M.ウェーバー)
 M.ウェーバーはマルクス主義を批判した有力な学者であるが,彼は「価値からの自由が社会科学にとって重要だ」と主張し,価値を社会科学から追放してしまった。
?誤れるスピリチュアル運動(オウム真理教)の汚点
 オウム真理教はサリン事件を起こしたために,スピリチュアル運動に対する誤解が広がった。
?ID理論に対するバッシング
(2)都市・情報環境
 霊性を呼び起こす星辰明月山岳大洋,いずこにありや? 人々は,そのような環境を求めて遠くに出かけ,ようやく息をついている。都市環境は,騒音,多忙,インターネット浸り,機械とマニュアルにこき使われ,人間味薄く,群集の中の孤独である。情報や広告などの氾濫によって,真の救い主,正師もなかなか見つからない。
(3)霊性教育の不足
?キリスト教界
 肝心の宗教界はどうか。キリスト教界を見ると,神学校は聖書を学ぶためにと言って,はじめからヘブル語・ギリシア語・ラテン語・ドイツ語などを学ぶ「語学校」のようになってしまっている。「キリスト新聞」が牧師に対するアンケートを行なったところ,「(聖霊の恵みを説くべき)神学校でもっと霊性教育を受けたかった」という意見が多かったという。
?仏教界
 日本の寺院では,寺院経営に役立てるために経営学を導入しようという熱が高まっている。これでは霊性教育を担うべき宗教界も頼りない状況である。
(4)日本人の「こころ」観
 ラフカディオ・ハーン(Patrick Lafcadio Hearn,小泉八雲,1850-1904年)の作品に『Kokoro』(1896年)というのがある。彼が日本人の心を観察して,「日本人のKokoro(心)は西洋人のmindやheadとは違う,むしろheartに近い」というようなことを感得したのである。それは英語に翻訳できないとしてKokoroと表記した。
 西洋人は,「霊」(spirit),「体」(body),「知」(mind)の三要素で人間を理解する。一方,日本人は「心」「身」の二要素で理解する。しかも二要素といいながら,「心身一如」と言い,未分化である。さらには,「物心一如」(芭蕉)「梵我一如」(ウパニシャッド,唯識)ともいうように,人間の心はモノとも世界とも一緒だという。あまりにも未分化かつ直覚的である。しかし,これでは霊独自の認識,分析,発展には弱い。

3.「スピリチュアル時代」研究と「霊性教育」の推進

(1)本アカデミーのミッション(使命)と合致するか?
?戦争の原因と戦争の防止・世界平和運動
 マルクス・レーニン主義では,戦争の原因を「資本家の市場独占欲」と単純化するが,古来,領土(課税権),戦利品,奴隷,資源,交通路確保,報復,ゆすり,帝王の征服欲と民衆の歓呼などいろいろな原因がある。とくに宗教は,戦争の一因ともなりうるので,世界平和を目的とする本アカデミーで研究する必要がある。現在進行中で切迫しているイラン・イスラエル戦争も,その根本はイスラームとユダヤ教との宗教の争いであるから,メタ宗教(両宗教の上に立つ宗教)によって解決することもあり得るだろう。
スピリチュアリティの興隆と宗教の再興
 宗教学者で東京大学の島薗進教授は,『スピリチュアリティの興隆 新霊性文化とその周辺』(岩波書店、2007年)などの書を著し,スピリチュアリティの興隆や宗教の再興について言及している。彼の本は知的で目配りは広いが,残念ながら,霊性を高めることに役立つとはいえない。
 知的で,かつ,霊性を高めてくれる類の本としては,神谷美恵子『生きがいについて』(みすず書房,2004年),渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎,2012年),鈴木大拙『禅堂の修行と生活・禅の世界』(鈴木大拙選集第6巻,春秋社,2001年)などを推奨したい。また,内村鑑三『一日一生』(新版,教文館,1997年)は,彼の膨大な著作の中から抜き出して365日に割り振ってまとめた本で,知的というより独断的ではあるが霊性は強いものである。
 このようにスピリチュアリティが興隆する兆しが見られ,それとともに霊性を高める宗教が再興することが可能であり,必要であると思う。
?科学と宗教の統一
 2012年7月4日に,ヒッグス粒子の発見が発表された(CERN)。ヒッグス粒子は,物質に質量を与える役割を持つ。それが存在しなければ宇宙を構成する星や生命などが生まれないことから,「神の粒子」とも言われている。では,そのヒッグス粒子はなぜ生まれたのか? 宇宙は,1秒にもならないごく僅かな時間に誕生し(宇宙の始原=ビッグ・バン),すぐヒッグス粒子が生まれた。そうなると「宇宙の理法(神)により」誕生したとしか物理学も言えない。物理学もここまできている。
 次に医学分野。東京大学医学部には石碑(相良知安先生記念碑,1935年建立)が立っている。それは,明治の初めに西洋(ドイツ)医学を輸入して漢方を駆逐し,ドイツ医学で日本の医学を建設したという記念碑である。しかし,いまや近代医学(ドイツ医学)の支配が解けて,代替医学(alternative medicine)の名の下に漢方医学を公認するようになった。漢方医学の中には「気」の概念が入っており,従来の唯物的医学ではなくなりつつある。
 さらに見神の秘儀へも科学が接近しつつある。科学の発達は著しく,宗教の奥の院(見神の秘儀)にまでその目は迫っている。若い世代はそれに引きつけられている。この科学の攻勢は,宗教にとって一つの「危機」でもあり「機会」でもあるのではないか。
(2)特に大切な世代
 いまスピリチュアリティをとくに必要とするのは,どの世代か。
 一つは,団塊の世代である。昨今,団塊の世代が大量に定年を迎えつつある。彼らは今まで一生あくせく働いてきたが,ようやく自由の身になった。自由時間を何に使うべきか。彼らは相当の知識は持っているが,霊的にはほとんど無知である。この人たちには必要な世界である。
 次に,受験競争の世代である。受験戦争は激しい頭脳の酷使をもたらしている。
 そして,中堅ストレス世代である。彼らはコンピュータ社会の中でコンピュータにこき使われ,非常なストレスを受けている。最近,「新型うつ病」が大発生している。新型うつ病が一人発生すると,その人の年収の約3倍の費用が会社にかかるという。社会的にもたいへんな負担になってきている。
(3)この研究の重要性・優先度の評価,他との協力
 PWPAとして研究するのに値するものとして,私がこの春7つのテーマを挙げて,PWPAの全理事にアンケートをとり,重要性・優先度の評価を行なった。その上位三つは,下記の通りである。
?「新エリート教育」(『圓一』と協力して研究したらどうか)
?「対中メタ文明の創出」(平和政策研究所と協力して研究したらどうか)
 膨張し強力になりつつある中国に対抗するために,日米韓が協力すべきだが,その基礎となる精神的基盤,すなわちメタ文明ともいうべきものを創出する研究である。
?「スピリチュアル時代」
(4位以下略。なお,『世界平和研究』2012年夏季号42頁以下参照)
(4)霊性教育の内容(一案)
 霊性教育の内容はどうあるべきか。各宗教がそれぞれの霊性教育の方法を持っているが,譬えてみれば,幼稚園から,小・中学校,高校,大学,大学院までの教育体系があるとすれば,その多くは小学校レベルに留まるか,一気に大学院レベルに飛んでしまう。それを幼稚園から大学院まで順次体系的につなげていく必要があるが,それについての私の一案を次に紹介する。
<修行順序案>
?内観(白隠,吉本伊信)
?鏡暗示(中村天風)
?称名・礼拝
?断食・祈祷
?座禅弁道
?菩薩行(為に生きる)
?六波羅蜜(布施,持戒,忍辱,精進,禅定,智慧)
?成道・布教
 ??はいわば幼稚園レベル。自分に悩みのある人をまともにする段階である。内観とは,一室にこもってじっと自分の生い立ちを省みる。鏡暗示は,鏡を目の前に置き,例えば,自分の顔を見ながら「自分は恐がらない」などと声をかけ暗示をかけてから眠る。翌朝目が覚めて,もう一度鏡を見ながら,「自分は怖くない」と声をかけて暗示をかける。このようなことを繰り返していくことによって恐怖心がなくなっていく。この??で普通人に戻る。
 次に,いわば小学校の段階以降に入ると,?〜?を行なう。それを超えると,?菩薩行,すなわち「為に生きる」実践である。さらに菩薩から仏に行くための方法は,?六波羅蜜の実践である。最終段階は,?お釈迦様のように成道すれば,自然と布教するようになる。
 こうした霊性教育の理想は,寮生活である。東京大学の例で言えば,私も学生時代に住んでいたところだが,百年以上続いている「同志会」というのがある。そこでは三つの義務(three minimum duties)がある。すなわち,毎朝の礼拝,金曜会(礼拝と感話),日曜礼拝(所属する教会などどこでもいい)の三つを守る。また仏教系では,「求道学舎」というのがあった。
(5)霊性の成長の結果―人格の向上,新しい価値観
 霊性が成長した結果,どうなるかといえば,人格が形成され,新しい価値観を獲得する。人格の向上は,完全な人格(ブッダ)を目指していく。つまり,素晴らしい智慧,慈悲の両方を備えた完全な人格である。そして私利私欲ではなく「愛人愛国愛世界」の価値観をもった人こそ,新エリートであるべきだ。
(6)スピリチュアル産業とスピリチュアル時代の政治運動
 ここではスピリチュアル時代の政治・経済について論じる。
?スピリチュアル産業
スピリチュアル時代のキーワードは「エクスタシー(恍惚たる歓び)」である。
人々はエクスタシーを求め,諸産業がこれを供給するだろう。既にパチンコ・エクスタシー産業は年間20〜30兆円の規模に達している。この時代,スピリチュアル産業(広い意味で,宗教活動も含む)ないしエクスタシー産業はGDPの何パーセントを占めるようになるだろうか?
 悟り・見神のエクスタシーを最高として,多くの種類のエクスタシーがある。それらはどういう関係にあるのだろうか?
 例えば, 3人の男性殺人などの罪で裁判にかけられた木嶋佳苗被告は,その法廷において(2012年春)「素晴らしい性的エクスタシーを与えるのだ」ととくとくと述べたという。それはあたかも一つの宗教教祖の観を呈したのであった。
 『脳はいかにして〈神〉を見るか』(Andrew Newberg他,茂木健一郎監訳,PHPエディターズグループ,2003年)によれば,見神エクスタシーは他のエクスタシーと共に,セックスのエクスタシーを生む神経回路が進化して生み出したと推定している。つまり全部つながっているというわけである。究極の唯物論だが,まだ神罰は下っていない。
 実は,私(加藤)が作った仮説に「PBMI System」(President’s Brain Machine Interface System)がある。これは最近話題になっているBrain Machine Interfaceから着想したものだ。BMIは,人間の脳から発する電磁波を捉えて,直接にコンピュータを動かすというシステムだ。考えてみれば,企業とは司令部(オフィス)から工場に次々に情報を伝えてモノを作るのだから,コンピュータによる巨大なシステムになっている。そのトップにいるのが社長である。一般社員はみなコンピュータによって使われている。「もっと儲けたい」などという我欲を自由に行使できるのは社長だけだ。BMIが発展すると,社長が思ったとおり企業全体が動くようになる。その社長の頭脳(brain)が曲がっていてはダメだ。会社は社長の了見以上によくはならないといわれる。そうなると社長の頭脳を良化することが最重要課題となる。早い話が,社長の心を清め活力をつけることである。それこそがスピリチュアリティの大きな任務となる。
?スピリチュアル時代の政治運動
 次に政治面。スピリチュアル運動が政治運動にまでなってくる例を挙げる。
宗教改革の後,新教と旧教が相戦って三十年戦争(1618-1648年)が起こった。終局はウェストファリア条約が結ばれ,現在の体制の元となった。その結果,新教(プロテスタント)と旧教(カトリック)の棲み分けができた。
 日本では,一向一揆があった。織田信長,豊臣秀吉,徳川家康は,一向一揆にさんざん悩まされたが,結局は世俗の力が一向一揆を打ち負かした。家康のときに,宗教界と政治界との妥協が成立し,徳川幕府では格の高い寺社奉行が宗教界を統制した。
 創価学会と公明党。創価学会は何を目的とするかといえば,「南無妙法蓮華経」が日本中に広がること(広宣流布)。そしてそれはいつ完成するのか。天皇が創価学会の信者になり「南無妙法蓮華経」を唱える国立戒壇ができたときである。そのために政治活動を行い,公明党による多数派政権を作り国立戒壇を建設して天皇にお参りをさせるのである。しかし,創価学会は比較的おとなしい。国家の枠内の活動にとどまり,国家を破壊しようということはない。
 ところが,オウム真理教は,日本国転覆陰謀を謀った。オウム真理教は(その初期には)宗教活動ではあったが,あるときから日本を転覆し自らの国家を作ろうとして教団内に省庁組織を作った。大量殺人を行なうべくサリンの製造も行なった。
 私は「スピリチュアル時代の到来」を唱えているが,あたかもパンドラの箱を開けた如く,どんなものが出てくるかわからないという恐れも感じている。しかしそれだけスピリチュアル時代は,力を持っていることがいえる。国家がひっくり返るほどの力である。
 さらに付け加えれば,イスラームの興隆,米国の建国なども,例に挙げられるだろう。

おわりに

 最後に,宗教体験についてであるが,宗教の真理の基礎,真実性の核心の基礎に神秘体験がある。それは一人や二人の例外的な体験ではなく,かなり多いということを示そうと考えて,私は拙著『宗教から和イズムへ』(世界日報社,1995年)の中で,「宗教体験―神秘と悟り―の種々相」という節を設けて(同pp131-149),神秘体験の実例を挙げた。ウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』(岩波文庫[青]上・下,1969年,原題:The Varieties of Religious Experience)も同様に,神秘と悟りの実例を収集しているが,彼は西洋の実例を集めている。一方,私は六つの型に分類して日本の材料を集めた。この神秘体験のある人が,「スピリチュアリティの興隆」を唱えたら,力になる。
 それでは,スピリチュアル時代はいつ始まるのか。あえて言えば,「今日,ここ」から始まると言いたい。
(2012年7月11日,PWPA常任理事会において)
(2012年11月1日『世界平和研究』2012年秋季号より)