韓日連帯への課題―思想・価値観の視点

洪 熒(桜美林大学客員教授)
Hong Hyung

<要約>

 韓日関係がここ数年,かつてなくぎくしゃくし,竹島(独島)問題をきっかけに破裂した。表面的には歴史認識と「過去清算」の問題が原因とされているが,それに加えて思想・イデオロギーの問題,すなわち中国や北朝鮮を背景にした韓国内の従北勢力による「文化ヘゲモニー闘争」,つまり社会変革(革命)闘争が,韓日分断を重要な戦略目標としてきたという構造的問題がある。今までほとんど注目されなかったこの点を理解するとともに,韓日両国とも保守の拠って立つべき価値を求める努力をしながら,韓日の連帯強化を進めることが,真の東アジアの平和に寄与する道であると思う。


1.韓日の認識ギャップ

(1)政治制度の違い
 安倍政権は価値観外交を掲げ,韓国との連携を進めようとしている。一方,日本社会には近年人種主義とも見られる深刻な反韓・嫌韓感情が噴出している。その根源の一つに,現在の韓日両国が拠り立つところの歴史的・政治的背景の違いがあるように思う。もちろん,韓日両国は自由民主主義の政治体制と市場経済という共通点をもっている。ところが,この共通点が強調されすぎて,相手の本当の素顔がわからなくなった。
 例えば,多くの韓国人は,日本国憲法の第1章(第1条~第8条)が天皇に関する条項で始まっていることを知らない。いや,想像するのも難しい。日本社会も韓国の共和制とはどういうものか分からない。日本の近代史は,明治維新以降70年以上にわたる戦争の時代があり,1945年の敗戦をもって平和の時代が始まった。日本は,米国によって占領統治されても,その後の国体についてはあくまでも天皇制の存続にこだわった。日本人の間に共和制に移行するという選択はなかった。その意味で言えば,1945年に日本に「革命」は起きなかった。
 一方,韓国の近・現代史は,朝鮮王朝から大韓帝国を経て日本の植民地となり,1945年に植民地支配から解放された。ところが解放後,韓国人は朝鮮王朝体制に戻ろうとはせず,韓半島の南では歴史上初めて自由民主主義体制にもとづく「共和制への建国革命」を行なった。これは明らかな「革命」であった。その体制をつくるべき何の環境条件も整備されないままに,共和制の国を建てたのである。大韓帝国を法的に受け継いだのは韓国だが,その二つの国はまったく別の国だ。その後,韓国は経済的に成功して先進国の仲間入りをするような段階にまで至った。
 この点は,韓日の政治制度の大きな違いである。

(2)イデオロギーと価値観のギャップ
 戦後の歩みを見ても,国際政治の現実とそれに向きあう思想的認識に大きな隔たりがあった。
 1948年に大韓民国が樹立されたものの,50年6月にスターリンと毛沢東と金日成による奇襲南侵により6.25動乱(韓国戦争)が勃発し,事実上,中共軍と国連軍の戦いになった韓国戦争は,53年に休戦協定が結ばれた。この戦争で韓国軍は20万人以上が戦死した。最近,北朝鮮はその休戦協定の一方的破棄を宣言し,戦時状況に入ったと公表した(13年3月30日)。平壌側は,「ソウルだけではなく,ワシントンも火の海になる」と豪語している。
 一方戦後の日本は,日米同盟で米国に守られ,平和の時代を迎え経済成長に邁進した。6.25動乱では経済的効果(朝鮮特需)も享受した。その間,韓国は戦後一貫して北朝鮮との軍事的・思想的な緊張状態が今も継続しているのに,この点について日本は余りにも無頓着すぎると思う。
 最近,尖閣諸島を巡って中国海軍の艦船による射撃統制レーダー照射事件で日本は大騒ぎだったが,韓国からすれば,西海のNLL(北方限界線)では日常的なことで「今さら何だ」という思いもある。韓国は北との対峙状況においてここ数年に限っても哨戒艦「天安」が撃沈されたり,民間人が砲撃を受けるなど生々しい現実に生きている。それを日本はどう見てきたのか。
 かつて韓国の大統領が暗殺されかけたときでさえ,日本の外務大臣は国会で「韓半島には北からの脅威はない」と答弁していた。こうした事件が起きても,日本では「韓国政府がわざと誇張して南北対立状況を煽り捏造している」とさえ主張する勢力もいる。それよりも低いレベルの日中の緊張状態にもかかわらず,なぜ国中が大騒ぎをするのか。このように日本も,韓国も,お互いが相手国の現実認識を客観化できていないと思う。
 ところで,日本では「死ねば(誰でも)仏になる」と広く言われている。それならば,金日成・金正日はいま仏様なのか? スターリンや毛沢東もそうなのか。かつて,自由民主や人権といった価値観のなかった時代の戦争では,敵も死ねば仏になり得たかもしれない。近代的国民国家から成り立つグローバルな現代世界においては,人道的罪などの普遍的な価値基準がある。昔のように戦いをして死ねば仏になって済ませるという過去を清算する時代と,いまは違う。しかし日本は,「(韓国は)過ぎ去ったことを何度も言い立てるのか。過去のことは水に流せばいい」と言う。
 価値観という言葉を使う以上,価値観の中身に関する議論が必要だが,それを怠っている。こうしたいくつかの文化的違いを見ないで,同じ価値観を共有しているという(幻想的)認識をもって互いに向き合っているために,(双方とも)非常に混乱している。日本では,こと韓国・朝鮮に関する情報に関してはバイアスのかかったものが余りにも多い。そうした誤解や俗説が定説化して相互関係が築き上げられたわけだから,その上で韓日の入り組んだ問題を話し合うのは至難の業だ。

2.日本の課題

(1)色眼鏡で見る韓国認識
 今年1月,元駐韓国大使・小倉氏が,『秘録・韓日1兆円資金』という本を著し,韓日の外交交渉の裏舞台を赤裸々に語った。また駐韓国大使館で広報官を務めた町田貢氏が,『日韓インテリジェンス戦争』(2011年2月)という本を出して韓日問題を論じた。それらの視点を見ると,日本の外務官僚あるいは外務省の韓国認識がどのようなものであったか,如実にわかる。
 例えば,小倉氏の著書には「全斗煥政権は軍事ファッショ政権だ」という外務省の認識が記されてある。日本は自由民主主義の国だから,「軍事ファッショ」は明らかに日本の敵であるはずだ。これは,日本の左翼勢力がそう主張していた言説をそのまま鵜呑みにして述べたようなものだ。全斗煥政権(韓国政府)を軍事ファッショ政権と規定したのは,多分「光州事態」(光州事件)のためだったはずだ。
 ところが昨年12月28日,光州事件に関する民事訴訟で,韓国大法院(最高裁判所)の判決があった。これは「光州事件は,北の特殊部隊が暴動に発展するように工作した北の謀略だ」との趣旨の本を書いた人が,当時の被害者たちにより名誉毀損で訴えられた裁判であった。最高裁判決は,その著者に対して無罪を言い渡した。つまり光州事件について北の関与を裁判所が認めたのである。
 光州には,未だに身元不明の屍が13体あるが,それは明らかに韓国人ではない。それはどこから来たのか。当時,銃傷で死亡した市民の三分の二は,戒厳軍(韓国軍)の銃弾によるものではなかった。銃傷と銃弾を調べれば,戒厳軍のものか,それとも別のところのものかが判明するのだが,明らかに戒厳軍のものではなかった。それならば,市民同士の撃ち合いか,第三者の誰かが撃ったに違いない。事件直後にそのような初歩的事実が分かっていたのだが,それを無視して内外のマスコミは「光州事件は韓国の民主化運動であり,それを弾圧しクーデタを起こし成立したのが全斗煥政権だった」との言説を流布させた。
 日本のマスコミも科学的検証なしで,全斗煥政権を一方的に非難した。後に,明らかになった歴史的な真実を謙虚に受け止めることもせずに,誤った報道への反省もしない。マスコミは報道もしないし,一度決め付けるとその態度・見解を永遠に持ち続ける。
 金大中・盧武鉉両大統領に対する評価についてもそうだ。昨年,韓国で金正日と盧武鉉との対話録が公開され,その内容が本として出版された。それを見ると,盧武鉉大統領は次のように言った。「私はあなた(金正日)のために,米大統領と喧嘩をした。私はあなたの代弁人の役割を果たした」という旨で述べている。このような行為は韓国刑法で死刑だけを規定している与敵罪に該当する。
 このような真実を見つめないことが,韓日の歴史には余りにも多い。要するに,俗説で言われた多くが捏造された歴史である。それで今,韓国では現に南北間だけでなく南の内部で歴史戦争が行なわれている。

(2)日本の「保守」思想への疑問
 麻生外相が(価値観外交の一環で)インドを訪問したが(2013年1月),突き詰めてみれば,それは価値観に基づく外交というよりは,「敵の敵は味方」という次元とも解釈できる。ベトナムとの連帯も,ベトナムと日本は価値観を共有するのか。ベトナムは現在,共産党政権だ。これで「価値観外交」と安易にいえるのか。対中戦略として中国に対立するところとは手を結ぶことを価値観外交といえば価値観がおかしくなる。
 朴槿恵大統領候補が当選した後,今年1月初めに安倍首相は特使として額賀福志郎元財務相,逢沢一郎元国対委員長,河村建夫選対委員長を派遣した。額賀議員と河村議員は,日朝国交正常化推進議員連盟の役員だ。安倍首相の価値観外交の一環で,首相の特使として訪韓した人物が日朝国交正常化を促進する人だったという点について,その価値観とは何なのか,日本として整理して欲しい。
 中国共産党と価値観を共有することはできないはずなのに,日本の財界や外務省には強い親中勢力がある。日本は戦後,米国の多大な協力を得ながら発展してきたが,冷戦時代に,「政経分離」と称して中国と国交正常化を行い中国に積極的進出を図ってきた。それを「全方位外交」とも言っていた。その日本社会の大勢の人々が,いま韓国が中国の属国に戻るとなじる。韓国は中国とは全く別個の国であることすら認めようとしない。


3.韓国の現状

(1)韓国版「文化大革命」
 現代韓国政治の現状について政治思想戦の観点から見てみたい。
 金大中・盧武鉉政権を出現させた歴史とその左派政権の10年間は,韓国版「文化大革命」の時代であった。韓国における左翼は,「主思派」(主体思想派)や「従北勢力」と呼ばれるが,彼ら「紅衛兵」は毛沢東の紅衛兵以上であった。彼らは,イタリアのアントニオ・グラムシ(Antonio Gramsci,1891-1937年,イタリアのマルクス主義思想家)が主唱した「文化ヘゲモニー」あるいは「文化陣地」という戦略を最も忠実に実行し成功したのである(注1)。韓国は金大中・盧武鉉政権の10年間を通して国家的反逆体制が完成した。その前の金泳三大統領は,それを導いた「左翼の宿主」だ。もちろんその背後には,北だけでなく汎社会主義陣営のさまざまな工作があった。
 例えば中国共産党は,近年韓国の若手学者を中国に招待し,親中勢力化工作をやっている。そのための資金を惜しまないと言われている。
 従北勢力は,北朝鮮があぶなくなってきているので,将来を心配して中国に付こうとして今や「従中勢力」になってしまった。彼らが韓国の「中国化」を図っている。
韓国の野党の左傾化は恐ろしい水準だ。第1野党の民主統合党の党歌の作詞者と作曲者が,1992年に発覚した大型スパイ事件である「南韓朝鮮労働党中部地域党事件」の連累者である(注2)。また統合進歩党(旧民労党)は韓国国歌「愛国歌」の斉唱を拒否している。
 既に述べたとおり,全斗煥大統領には市民と学生を殺した「殺人鬼」というレッテルを貼り光州虐殺の張本人という評判を立てる謀略に,平壌側と従北勢力は成功した。その結果,彼らは「ファッショ政権と闘う民主派勢力」となった。それが金大中・盧武鉉反逆政権の誕生に結びついた。
 このように韓国は,ソウル・オリンピックの後,つまり東西冷戦終結後,一貫して左傾化してきた。日本は逆に右に向って進んだ。北朝鮮は,6.25動乱以降,軍事優先路線を歩んで破綻した。韓国は経済優先戦略で成功した。それで北は,韓国の内部崩壊を追求する。そして階級闘争を隠し「民族共助」戦術を駆使する。韓国社会のグラムシの末裔が,北朝鮮の動きと連動しながら文化戦争を繰り広げてきた。先進国を革命するためには,文化陣地を先に掌握するというグラムシの戦略が,ほぼ成功したのが今の韓国である。
だが今,彼らに対して反撃がはじまった。保守系知識人たちが,圧倒的な悪の文化と戦い始めたのである。昨年の大統領選挙をめぐる闘いは,保守系のぎりぎりの勝利であった。この流れが分かってこそ,韓国の現代史が分かる。
 いまだメディアの9割をグラムシの末裔が支配している。例えば,「朝鮮日報」は日本では保守系と思われているが,実はそうでもない。もちろん,「ハンギョレ新聞」などと比べれば,右だが保守とは言えない。「朝鮮日報」も10%ほどの左翼(紅衛兵世代)が朝鮮日報の肝心な部分を総て押さえている。もし「安倍首相は,極右ではない」などの論説を書けば,湖南(全羅道)地方から不買運動や広告不掲載運動が起きる前に社内の「検閲」を通れない。
 韓国は,共産主義勢力の謀略によって,「反日運動」へと仕向けられてきた。よく「反日感情」と言われるが,それは感情というよりイデオロギーだ。今年3月初めに小規模個人店主らが加盟する「路地裏商店街保護消費者同盟」が始めた「日本製品不買運動」がさっぱり盛り上がらなかったのも,それを反証している。共産主義は韓日関係の破綻を狙っている。そして,日本の左翼マスコミが反日運動を支援する。
 そもそも「反日ビジネス」を始めたのは日本の左翼だ。こうした実状を日本人はほとんど知らない。とくに日本の朝鮮・韓国の専門家は,誤った認識に気づいたとしてもそれを反省し是正しようとはしない。先ほどの光州事件に関する判決は重大事案であるから,追跡調査をして当然なのに,日本では事実報道すらなされない。
 また韓中関係に関して言えば,韓国では,『蜃気楼か? 中国経済』(金起秀著)のような本がベストセラーになったのに,こういう類の保守的本は日本にまったく紹介されない。日本社会は韓国を客観的に,理性的に見て欲しい。
 
(2)朴槿恵大統領は保守なのか?
 朴槿恵大統領について日本では保守だと思われているが,朴槿恵大統領はそもそも保守とはいえない。李明博前大統領は,思想・イデオロギーをいう前に,ものごとに対する概念に乏しい人物であったが,朴槿恵大統領も同じだ。
 韓国民は彼女を大統領に選んだのは,最悪を避けるための,「次悪の選択」ということだ。第6共和国は,今度で6人目の大統領だが,すべて「次悪の選択」だった。4人は軍経験がなく盧武鉉大統領は軍をのろった。もし文在寅が大統領になっていたら,今年中に北と高麗連邦制に移行するだろうから,そういう悪夢を避けるために,朴槿恵を選択したのである。
 80年代以降,386世代の主思派と言われる人たちが「紅衛兵」として「文化陣地」やメディアの9割を支配するようになった結果,韓国民は知らないうちに洗脳されてしまった。そういう環境で,ぎりぎり朴槿恵氏が当選したのは,間違いなく保守系の勝利と言える。左翼が文化を100%支配したら朴槿恵大統領は誕生しなかったはずだ。左翼文化の一角を保守が崩したのである。湖南(全羅道)地方は左翼勢力が強いが,逆に反共保守も非常に勇ましい。全羅道の反共保守が朴槿恵支援に回ったことで,朴大統領が当選した。
 朴槿恵大統領は,戦争中の国の政治家なのに,実は平壌の金氏王朝と命をかけた闘いをやったことがない。教養書としては主に中国の哲学書類を読んだようだ。つまり観念論的なところがある。観念論は共産主義の文化戦略に弱い。例えば,「経済民主化」政策を強調するが,これは本質的に「社会主義」の政策である。普遍的な福祉として政府が全国民を幸せに面倒を見るという発想は,まさに社会主義的発想だ。そもそも「経済民主化」という表現は,共産主義や社会主義に対しての拒否反応を和らげるための表現に過ぎない。中身は同じだ。
 メディア,映画などの「文化」を通じて従北勢力が社会変革(革命)を進めているため,それを見抜いて戦う気概がない人は頭から屈服することになる。朴槿恵大統領はこの革命勢力と熾烈に向き合ったことがない。
 朴槿恵大統領は,外交,安保など重要なポストに左翼的思想の人物を配置した。外交部長官の尹炳世氏が「外交の優先順位は米中日ロ」と云々したのは,まさにその反映である。国家安保室長の金章洙氏(盧武鉉政権時の国防長官),統一部長官柳吉在氏(北朝鮮研究学会長)などは,金大中・盧武鉉路線の継承を主張する盧武鉉政権の残党で,いわば従北勢力の一員と言える。この人事に対して,韓国の保守派は深刻に憂慮している。
 北側の核ミサイル実戦配置が間近で,停戦協定の破棄を宣言しているのに,朴槿恵大統領は,北側に対して断固たる措置を取っていない。世論調査では,韓国民の三分の二が独自の核抑止力を求めているのに,政府と政界は無感覚だ。
 李明博政権の発足当時,従北勢力は街頭デモで抵抗したが,今回は政府組織改編案と長官人事聴聞会に対する国会サボタージュで抵抗した。昨年,重要な案件は6割の賛成によって成立するという「国会先進化法」が成立した。李明博大統領は,憲法違反であるとして拒否しようとしたが,それを通したのが,野党と談合した朴槿恵のセヌリ党だった。韓国国会の勢力図は,与党がかろうじて半数を維持できるかどうかであるから,その法律によって何もできなくなってしまった。未曾有の安保危機なのに敵前分裂だ。いま朴大統領に求められるのは,福祉ではなく安保管理能力だ。


4.韓日の連帯に向けて

 日本と韓国では同じく保守といってもだいぶ差がある。韓日が共通の価値を掲げ協力してある方向性を目指すとすれば,何を目指すべきか。韓国の自由民主主義建国革命が目指す価値は,簡単に言えば,個人の自由と安全の拡大と言えるのではないだろうか。韓国の国軍はそのような価値のために戦い死を覚悟する。
 日本は,1945年以降最高の価値として何を目指してきたのか。日本の自衛隊はどうなのか。外国から攻撃されたら反撃する。有機体として当然だが,それはどのような価値観に基づく行為なのか。その辺から確認することが,韓日の共通の価値観を確認するスタート点になると思う。
 日本の自衛隊法には「わが国の平和と独立を守り,国の安全を保つため」と記されている。国のために戦うのはもちろん尊いことだが,個々の兵士が納得できる何らかの普遍的価値もあるのが望ましいと思う。生活の糧のために軍人になったのならば,傭兵と変わりない。共産主義国家の軍隊は,共産主義イデオロギーと党の命令に従って闘うだけだから惨めだ。自由民主主義社会の韓国の軍隊は目的がはっきりしている。つまり共産独裁と闘い北を解放し,2000万人の人々に韓国と同じ自由と安全を与えるという善と正義の大義名分,自分を納得させられる普遍的価値がある。日本はその点がどうだろう。
 韓国の保守は,日本との同盟を望む。韓国はおそらくウラル山脈以東のアジア大陸で自由民主主義制度が根を下ろした唯一の国だから,できればアジアの総ての民に自由と安全を与えたいというのが,保守のビジョンである。そのためには日本と一緒にやりたい。日本と韓国が同盟を結んで立ち上がればそれが可能だ。そのためには,韓日両国が互いの違いを自覚した上で共通の普遍的価値を明確化して手を取り合う努力が,今こそ必要であろう。

(2013年3月7日)
注1 グラムシは次のように言う。「まずは文化を変えよ。そうすれば熟した果実のごとく権力は自然と手中に落ちる・・・ただし,文化革命には種々の制度――芸術,映画,演劇,教育,新聞,さらにラジオという新媒体――転換のための『長い長い工程』を要する。それらを一つひとつ慎重に攻め落とし革命に組み込んでゆくことが肝要だ。そうすればやがて人々は革命を理解し,歓迎さえするようになる」と。
注2 民統党の党歌作詞者は李哲禹・元ヨルリンウリ党議員で,李氏は1992年「朝鮮労働党」に現地入党した後,党員符号を付与された人物だ。ここで「現地入党」とは北韓の朝鮮労働党に入党するため北韓を訪問せず,韓国で現地のスパイを通じて入党した後,「鮮朝鮮労働党」が追認することをいう言葉だ。李氏は,2004年の第17代総選挙で国会議員に当選したが,間もなく公職選挙および選挙不正防止法違反で議員職を喪失。また民統党党歌作曲者の尹ミンソク氏は,ロウソク集会の主題歌である「憲法第1条」を作詞・作曲した人物で,「金日成大元帥は人類の太陽」,「韓民戦10大綱領」などを作った運動圏歌謡の作曲家だ。尹氏は,1992年「朝鮮労働党中部地域党」傘下団体である「愛国同盟」に加入し,金日成称賛歌を作曲したし,このような左翼活動のため国家保安法違反で4回拘束された。国家安全企画部の捜査発表(1992年10月6日)を通じて明らかになった朝鮮労働党「中部地域党」事件は,労働党序列22位の李善実(2000年死亡)や現在「統一運動家」として活動中の金洛中などが1995年に共産化統一を為すという戦略目標で暗躍した建国以来最大のスパイ事件だった。(「統一日報」HPより引用)