実質的世界平和への道
―世界に頼られる支援国家日本の構築―

川上与志夫(帝塚山学院大学名誉教授)

 平和とは戦争や紛争がない表面的平和だけでなく,家庭的にも社会的にも心配のないおだやかな状態,実質的平和を意味している。戦争放棄を決めた日本が世界平和に寄与するには,何が可能だろうか。私は世界に頼られる支援国家になることだと考えている。

 1つには,世界各地で起こる地震,津波,洪水,旱害などの自然災害や,紛争などによる人為的破壊などに,即座に率先して立ち向かうことである。大きな機材を分解して現地に運び,作業部隊や医療部隊を派遣して救援作業を行う。日本はこれを実践してきているが,さらに敏速で大規模に,また,事情によっては長期的に行うことである。「何かあったら,日本が来てくれる」という信頼感と安心感を世界の人にもってもらうことである。

 2つには,アフリカ,中近東,アジアなどの発展途上国の第一次産業に寄与することである。紛争の主な原因の1つは,十分な食料がなく,まともな住居のないことにある。有効利用されていない広大な乾燥地帯,高冷地,湿地帯などの農地化に挑戦し,それらの地に適した農産物の栽培を目指す。人間の尊厳に見合う住居を確保し,農地を開拓することによって安定した食料供給を可能にすることが,各地の実質的平和には急務である。日本人の開発した高度な栽培技術を駆使すれば,世界中の食料事情は格段によくなるだろう。
 農業だけではなく,林業による植樹と砂漠地帯への対応も大切だ。この事業は地球温暖化の緩和に役立ち,地域住民の雇用にもつながる。莫大な費用と長期の試行錯誤が必要であろうが,これは地球や人類のため,また,あらゆる生物のために,今やらなくてはならないことだ。さらに,水産業による世界への貢献も可能である。海洋の活用と水産資源の増殖は,効率よい平和産業であるといえよう。各種の海藻や魚などの養殖と普及など,日本は世界への食料供給の一旦を担う実力を備えている。

 3つには,第二次産業による,農産物や水産物の加工においても,日本は開発途上国で大いに活躍できる。優秀な技術的指導者を派遣し,実践指導することを,日本は国家事業として積極果敢に推し進めていくべきだ。世界各地の困窮や不平等への挑戦は,世界平和への第一歩であるからだ。このためには,義務教育や中等教育の遅れた国への教育的支援も必要だ。各国の事情もあろうが,日本が貢献しうる余地は多分にある。待ったなしの実践こそが,いま世界で求められている。
 上記の提案は目新しいことではない。私の主張は,形だけの中途半端な実践ではなく,もっと大胆に,積極的に,誠意をもって行うことである。世界の人に頼られ,愛される支援国家日本。身を挺しての支援こそ,平和日本が世界平和のために貢献しうる方策ではないだろうか。心しよう,夢の現実化こそが未来へ続く道であることを。
(『世界平和研究』No.201,2014年5月1日号より)