米大統領の官僚統制

浅川公紀 (筑波学院大学名誉教授)

<梗概>

 トランプ米政権においては,大統領のFBI長官解任で超法規的解任の疑惑が深まり,スキャンダルは収拾がつかない方向に向かっている。司法長官との関係も緊張し,行政府内でトランプは孤立を深めている。共和党主導の議会との関係でも,大統領の孤立が深まっている。こうした大統領と行政府官僚機関の関係はトランプに始まったことではなく,歴代大統領が挫折感に似た不満を表明してきた。大統領は行政府のトップとして官僚を統制する多くの手段を持ってはいるが,それを阻害する障害を完全に克服することはできないできた。

1.はじめに

 米国では大統領が内外の政策を最終的に決定する。それを実行に移すのが官僚の役割である。そこには政策の決定を行う大統領と政策を実施する官僚との間に重要な違いがある。官僚は大統領の下にあって,大統領の決定を具体的に実施することを義務としている。しかし大統領が単独で決定を行うことはむしろ少なく,多くの場合国家安全保障会議(NSC)などの主要なアドバイザーや,あるいは主要な閣僚が決定に参画する。官僚は国の内外の情報を分析して対応策を講じ,大統領の決定を仰ぐ。こうした政策の形成が官僚の第一の役割である。官僚の第二の役割は,政策に継続性を持たせることである。たとえ大統領選挙で政権が別の政党に移ったとしても,そこに政策上の継続性を持たせるのが官僚の役割である。
 米国の行政府は15の省と約140の官庁により構成され,170万人の文民を雇用している。行政府は1600以上のプログラムを運営しており,そのプログラムの元になる法律は大まかなものなので,運営においては官僚機関がかなりの裁量を持つ。毎年大統領が議会に提案する法案は,省庁の官僚機関が立案・起草するものである。官僚機関はまた政策決定者,大統領と議会に情報を提供する。大統領は行政府における最も重要な人物である。
 大統領と議会は三権分立のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の関係にあり,大統領は議会対策で苦労する。官僚機構は大統領と同じ行政府に属しており,大統領の下に位置するが,大統領の思い通りにはならない。大統領は,閣僚,高官指名権限,組織再編権限など様々なやり方を通して官僚機関に影響力を行使できるが,その権限も憲法,法令,政治により制限される。大統領の官僚機構統制の難しさがある。

2.トランプと官僚の緊張

 トランプ米政権においては,司法省の独立機関である連邦捜査局(FBI)長官が牽制しあい,大統領のFBI長官解任で超法規的解任の疑惑が深まり,スキャンダルは収拾がつかない方向に向かっている。トランプ大統領の司法長官との関係も緊張し,行政府内でトランプは孤立を深めている。共和党主導の議会との関係でも,大統領の孤立が深まっている。
 こうした大統領と行政府官僚機関の関係はトランプに始まったことではなく,歴代大統領が挫折感に似た不満を表明してきた。
 大統領は7000近い常勤,非常勤の政治指名ポストを指名,解任する権限を持つ。それ以外は,人事局の基準により採用されるキャリア官僚であり,不正,怠慢などの理由以外では解任できない。キャリア官僚の7000人は相当な政策形成権限を持ち,12万5000人は政策に関する部分的責任を持つ。キャリア官僚は大統領の交替とは無関係に在職し続け,大統領よりも省庁機関に忠誠心を持つ。指名された人材が政策的見解の違いや経歴,倫理規制,情報開示義務,資産処分,金銭的理由,議員や公衆の反対などで指名を辞退する場合も少なくない。
 トランプ政権においては,司法省の独立機関であるFBIがロシアの米大統領選への介入工作,トランプ政権関係者のロシアとの談合疑惑を捜査している。大統領とFBI長官が牽制しあい,トランプ大統領のFBI長官解任で超法規的解任の疑惑が深まり,スキャンダルは収拾がつかない方向に向かっている。またトランプ大統領に好感を持たないキャリア官僚らが物議をかもす機密情報や大統領に不利な情報を頻繁に漏洩(リーク)しており,議会や利益団体の反対を引き起こすなど,大統領の行政能力を阻害している。官僚の抵抗は,政策の精神を実行することを拒否したり,上からの命令を部下に伝えないなどの形を取りうる。
 こうした大統領と行政府官僚機関の関係はトランプに始まったことではなく,ルーズベルト,トルーマン,ニクソン,カーターなど歴代大統領が挫折感に似た不満を表明してきた。大統領が閣僚や官僚に命令しても,それが実行されるとは限らない。民主党政権における社会プログラムの拡大に伴って官僚機関が拡大してきたことから,共和党大統領は官僚の多くが民主党寄りに偏向していると考える傾向がある。無党派層の考え方は民主党に近い。大統領選でもキャリア官僚の多くは共和党よりも民主党の候補に投票している。キャリア官僚の圧倒的多数は,現行レベルの政府プログラムを維持あるいは増大させようとする考えを持っている。トランプ大統領は,アウトサイダーとしてワシントンの政府官僚機関の縮小を主張し,就任後間もなく連邦政府の新規採用を軍,国家安全保障部門を除いて凍結した。しかし,実際にはこの政策には抜け穴が多く,政策が思うようには実行されていない。
 1978年の公務員改革法は,キャリア官僚の中で約7000人の幹部公務員のポストを設け,幹部公務員は能力に基づき官庁内,官庁間で人事異動できるようにした。これにより,新しい政策に抵抗する幹部官僚を入れ替えるなど大統領のキャリア官僚への統制力が拡大することになった。同法はまた,給与の基準として勤続年数だけでなく働きぶりも勘案するようにし,解雇の手続きを簡素化した。それでも働きぶりが悪い官僚を解雇するには平均18カ月かかり,代わりの官僚を雇うのに平均5カ月かかるので,多くの場合働きぶりの悪い官僚は放置され,迂回されている。

3.トランプ政策の実行性

 大統領が指名し解任できる閣僚や官僚も,大統領の政策を完全に支持するとは限らない。閣僚は,大統領の政策指針,キャリア官僚,議会,利益団体からの影響にさらされる。閣僚は多くの場合,省が管轄する事柄に関する専門知識や省の運営についての深い知識を持っておらず,深い知見を獲得できるほど長期間在任しないので,専門知識を蓄えたキャリア官僚に依存することになる。閣僚は,行政府のプログラムへの予算承認権をもつ議会や省を管轄する議会委員会に常に配慮しなければならない。省庁の長官は,大統領の政策とこれらの利害関係者の利害の間で微妙なバランスを模索しなければならない。
 ニクソン政権で保健教育福祉省長官になったキャスパー・ワインバーガーは社会サービス・プログラム,補助金の大幅削減を試みたが,社会の利害関係者,議会の強い反対にあい,最終的にはサービス・プログラムを維持しようとする官僚に迎合することになった。
 閣僚が大統領の政策を実施しない場合,大統領は閣僚を解任するオプションがあるが,閣僚が議会や利害関係者から幅広く支持されている場合は,大統領が閣僚を解任するのは政治的に困難である。フランクリン・ルーズベルトの商務長官は大統領の政策に反する立場を取ることが多かったが,ルーズベルトはその解任が政治的にマイナスになると判断した。FBI長官を長年務めたJ. エドガー・フーバーは政府内外から絶大な支持と評価を得ていたため,大統領は解任することができなかった。フーバーが大統領や司法長官に相談なしに行った1964年米ソ領事協定批准反対の議会証言など独立的な政治行動をした場合でも,大統領はそれを容認せざるをえなかった。トランプ大統領の場合も,議会や政府内で信頼を得ていたコミーFBI長官を解任したが,大統領への支持率低下,大統領の行動への議会,特別検察官調査の拡大など,大きな政治的代価を払うことになった。半面,ニクソンのウォルター・ヒッケル内務長官解任やフォードのジェームズ・シュレージンジャー国防長官解任など,支持基盤の弱い閣僚の場合は解任の影響も限られている。
 大統領の政策実行にとって,政治指名した者が速やかに議会に承認され,就任することが重要である。しかし指名から指名承認までの時間は長くなる傾向がある。その原因の1つは指名されるポストの数が増えていることに因る。ウォーターゲート事件後,ホワイトハウスも議会も指名,指名承認により慎重になり,FBIの身元調査もより徹底的に時間がかかるようになっていることも原因になっている。身元調査で社会的に不利な情報が公になる場合も多く,オバマ政権のエネルギー省,運輸省の副長官指名候補は身元調査開始後に指名を辞退した。身元調査の結果,指名に不利な情報が出てきて大統領が指名撤回を余儀なくされる場合も増えている。この結果,大統領は担当閣僚や長官が不在の状態で具体的政策課題や条約交渉に取り組まなければならない状況が増えている。
 トランプ政権の場合も,外交,内政で多く取り組むべき課題があるのに,次官,局長レベルのポストの指名,指名承認が遅れていて,空席のまま課題に取り組む事態が生じている。オバマ政権1期目の場合も,2009年夏の時点で,政府のトップ500の人事ポストのうち半数近くしか埋まっていなかった。大恐慌以来の金融危機と2つの戦争に直面していたのに,金融市場担当財務次官補などの局長クラスや陸軍長官らの指名承認が終わっていなかった。

4.ニクソン政権の試み

 ニクソン,レーガン,ブッシュはそれぞれ,官僚への統制を強化する試みを行ってきた。ニクソンは当初,各省の運営,政策を省の長である閣僚に委任する方針を取っていたが,国内政策担当の閣僚が官僚に逆に影響されるのを見て,政策決定権限を閣僚から取り上げ,ホワイトハウスのスタッフが主導するワーキンググループに移行させた。ニクソンは閣僚との会合の頻度を減らし,閣僚にアクセスをますます与えなくなった。ホワイトハウスのスタッフが政策決定,実施への関与を強めるにつれ,ホワイトハウス・スタッフの規模も大きくなっていった。この結果,ホワイトハウスのスタッフ自体が新しい官僚機関になっていった。ホワイトハウス・スタッフが政策実施にも関与を深めるにつれ政策決定に割ける時間がなくなり,政策決定の権限は事実上官僚に戻って行った。ニクソンは官僚機関の抑制を図ったのに,逆に官僚機関を強める結果を招来した。
 ニクソンは2期目にさらに官僚機関の抑制を決意し,閣僚の入れ替えを行って独自の影響力を持たない大統領への忠誠心が強い人材を閣僚に据えた。さらにニクソンは2000人の政治指名された次官補,次官補代理級のポストを解任し,忠誠心が強い84人のホワイトハウスのスタッフ,ニクソン再選委員会のスタッフやその他の忠実な人材で置き換えた。これにより,官僚をより効果的に監視することを狙った。さらにとりわけ忠誠心が証明された4人の閣僚に大統領カウンセラーの肩書を与え,省を超えた4つの大きな分野で他の閣僚が大統領の政策目標に合致した行政を行うことを確認するスーパー閣僚の責任を与えた。4人の閣僚の上のレベルに,キッシンジャー,アッシュ,エーリックマン,ハルデマンの4人のホワイトハウス筆頭補佐官が位置付けられ,「行政府全般の政策と活動を統合」し,大統領が責任をもつ活動の監督役を務めた。しかしニクソンはこの新体制が官僚機関統制に及ぼす効果を見ないままに,ウォーターゲート・スキャンダルで追い詰められ,補佐官の多くが辞任し,ついにはニクソン自身も弾劾に直面して辞任する結果になった。
 この結果,省庁の官僚は統制が弱まる中で,より自由に行政活動を行った。初期の兆候から見る限り,省庁に送り込まれた大統領に忠誠心の強いホワイトハウス・スタッフは専門知識,政治的経験の豊富なキャリア官僚に太刀打ちできないことは明白で,ニクソンの官僚統制の戦略はいずれにしても成功はしなかったと見られる。閣僚はスーパー閣僚に指示されることを拒否し,スーパー閣僚の体制は発足後4カ月で廃止された。

5.レーガン政権の試み

 レーガンは最も広範で組織的な行政府官僚機関統制の試みを行った。レーガンは政権移行期間に議会からの200万ドルと民間からの100万ドルをかけ,レーガン支持者から構成された100近い作業部会を組織して,各々の省庁を分析し,閣僚などの人選をそれまでのいかなる大統領よりも慎重に行った。人選では,大統領の政策目標とプログラムを支持する人材が選ばれ,行政管理予算局(OMB)局長に内定していたデビッド・ストックマンやレーガンの長年の補佐官らとの事前会合でレーガンから期待されていること,政策変更課題が説明され,取り組み姿勢が確認された。
 また大統領に国内政策で助言する7つの内閣協議会が組織され,定期的に閣僚の意見を聞き,閣僚に大統領の意向を伝えて閣僚の意見を大統領の政策目標に整合させる役割を果たした。協議会はレーガン2期目には2つの協議会に整理統合された。レーガンは省の副長官,次官レベルの人選でも閣僚にレーガンに投票した共和党保守という基準と指針を示し,中心的に関与した。候補者は大統領の国内政策顧問,政治補佐官,ホワイトハウス首席法律顧問,議会連絡担当などにより何重にも資格や能力,思想的純粋性がチェックされた。さらに,ジェームズ・ベーカー,エドウィン・ミーズ,マイケル・ディーバーという3人のトップ大統領補佐官,大統領自身により最終チェックが行われた。この結果,レーガン政権の閣僚,次官級レベルは「異例なほどの思想的一貫性」をもつことになった。
 レーガンは,キャリア官僚の縮小を目指し,就任とともに連邦政府職員の新規雇用凍結の大統領令に署名し,予算削減,国内プログラム削減,官僚の自主的退官を通じて,官僚機関の縮小を進めた。レーガン就任の1981年から1983年までの間に,国内政策担当の省庁で9万2000人キャリア官僚の数が削減された。変革の対象になった省庁でキャリア官僚の削減が顕著だったが,同時にこれらの省庁で最も政治指名の高官が増やされた。また規制官庁での人員削減が著しく,規制緩和が促進された。レーガンは就任とともに,新規の連邦政府規制の60日間凍結を命令し,将来の規制導入も減らしていった。レーガンはさらにOMBに省庁の規制の影響を審査させ,1983年6月末までOMBは6700の規制を審査し,9つに1つの規制が修正または却下された。さらにレーガンは,1978年公務員改革法を最大限活用して,大統領の政策に不満をもつ上級キャリア官僚を1982年には1226人,83年には1100人,人事異動した。またレーガンは,昇給につながる官僚の働きぶりの評価で,大統領の政策目標を推進するうえでの実績を重視した。
 レーガンは大変な時間と労力を,大統領の政策に対応する官僚機関を作り上げるのに投入した。指名プロセスにおける努力の結果,政治指名された閣僚や上級官僚は大統領の政策目標に敏感に対応し,それを推進しようとした。レーガン1期目で6人の閣僚が辞任したが,大半は個人的あるいは業績的理由によるもので,大統領との哲学的,政策的意見の違いが原因で辞任したのはエネルギー長官だったトレンス・ベル1人だった。半面,指名プロセスで,大統領との思想的一致を重視した余り,次官級で指名された人材の多くは能力,経験面で不足が目立った。このことは,レーガンの連邦政府改革の足かせになった。
 またレーガンは,OMBを規制の監視役として活用することで,官僚から生み出される新規規制の数を大幅に削減することに成功した。半面,OMBの規制審査の不透明性などに,議会,利益団体,官僚からの批判が強まり,レーガンの官僚機関,規制抑制への牽制が強まった。またレーガンはキャリア官僚削減で既存の規制実施を縮小することはある程度成功したが,既存の規制の廃止では議会の反対など大きな障害に直面した。議会は,レーガン政権が提出した保健,安全,環境規制を緩和あるいは廃止する法案に抵抗した。また上級キャリア官僚の一方的な人事異動や解雇に対しても,議会から牽制と批判が強まった。また連邦職員の人事監視役としての人事局がその役割を果たしていないという批判も出た。議会は人事局が議会の意図した機能を果たさず,政治化したと非難した。
 レーガンは前任者に比べ,官僚機関統制では最も成果を上げたが,議会,利益団体,官僚からの批判,指名した次官級の能力,経験不足のゆえに,当初願ったほど官僚機関の統制は達成できなかった。ただ,就任前からの官僚機関統制のための準備,省庁の状態の事前調査,次官級の指名,指名された人材への大統領政策目標に関する事前情報提供などは,大統領の官僚機関統制で効果があるものとして,将来の大統領にとっても参考になるものである。

6.ジョージ・W. ブッシュ政権の試み

 ジョージ・W. ブッシュはレーガン以来,官僚機関統制に最も積極的だった大統領である。ブッシュはレーガンと同様,忠誠心のある人材を閣僚,次官級レベルに配置することにかなり成功した。閣僚には,管理能力に優れた全国的に評価された人材が選ばれた。また次官級レベルの候補者をホワイトハウス人事課長が面接し,閣僚に次官級ポスト1つに対して3人の候補者リストを渡し1人を選ぶよう指示した。ただ閣僚の人選の基準は,独立的思考を許容するもので,ブッシュ2期目の開始時には15人の閣僚の9人が入れ替わっていた。このため,ブッシュは2期目には,閣僚として,個人の広範な支持基盤を持たず,政治的野心のない忠誠心のある人材を基準として人選が行われた。またコンドリーザ・ライスが国家安全保障担当大統領補佐官から国務長官に指名されたように,一部の閣僚ポストにはホワイトハウスのスタッフが指名された。ブッシュは閣僚の大統領政策目標との整合性を確保するため,ホワイトハウスのすぐ隣のオールド・エグゼキュティブ・オフィスに閣僚用事務所を設け,閣僚に週最低4時間そこに詰めて勤務し,大統領の政策目標とその推進の方法について説明を受けることを義務付けた。
 ブッシュはまた,企業に不利な官庁の規則や規制を削減する努力を積極的に行った。クリントン政権は政権末に254の連邦規制を導入したが,ブッシュは就任早々,省庁にこれらの規制の実施を凍結するよう指示を出した。またOMBを官庁が提案する新規規則の審査役として活用し,新規規制の提案の前提条件として「市場の破綻」を示すことを義務付けることで,新規規制提案の障害を設けた。ブッシュは,連邦政府の官僚の費用効果を高めるために,特定の業務を実行するうえで民間の契約業者と競争させる競争入札方式を導入した。2001年から2005年までの間に,民間契約業者による政府の仕事の量は440万件から760万件に増加した。これは,連邦政府職員の士気低下,人員不足,仕事の説明責任の低減,収益中心主義のサービス提供などにつながったとして批判も生み出した。ブッシュや多くの閣僚は民間企業出身で,官僚の報酬は働きぶりだけに基づくべきだと考えており,働きぶりに応じた給与の制度を官僚統制の重要な手段と考えた。これに対しては,議会,労組,官僚から強い抵抗があった。

7.おわりに

 活動家タイプの大統領は自分の意思に官僚機関を従わせようとする努力を今後も継続することが予想される。これに対しては,強い抵抗が予想される。また官僚機関の規模,複雑性,官僚のパフォーマンス自体が,こうした大統領の努力の大きな障害になる。また三権分立,抑制と均衡の原則に基づいて,米議会は行政府省庁の予算承認,活動監視の責任を与えられており,それが大統領の統制力強化に対抗する抑制力になりうる。閣僚などの政治指名者,キャリア官僚が省庁の予算承認権限をもつ議会の意向を無視することは自殺行為に等しく,省庁の活動に利害を受ける公衆や利益団体は数の上からの大きな政治的影響力をもち,それも無視できない。このことは官僚が大統領だけの意向に従えない力学を生み出す。大統領は行政府のトップとして官僚を統制する多くの手段を持ってはいるが,それを阻害する障害を完全に克服することはできないできた。大統領の権限は極めて強大であるが,大統領の官僚機関統制の難しさを強調することは極めて重要である。
(2017年7月11日)