政策決定における官僚の役割

山口彦之 (東京大学名誉教授)

 政府が内外の課題に対処するときは,政策決定が政治の責任で行われるが,行政集団である官僚組織はそれらの課題を解決するための具体策について積極的に提起すべきである。しかし,近年は政策形成において官僚の役割が著しく後退しているように思われる。
 その原因は,平成26年(2014年)5月30日に施行された国家公務員法等の一部を改正する法律によって各省庁の幹部職に関する任用方法が変更されたことにあると考えられる。
 政府は,各省庁の幹部職員を任用する際に,政治主導を強化することを狙い,従来各省庁の任命権者(大臣)の権限で行っていた方式を改め,内閣官房長官が適格性審査を行った上で作成する幹部候補生名簿に記載されている者の中から,任命権者が内閣総理大臣及び内閣官房長官との協議に基づいて行うこととした。
 この改正は,内閣の重要な政策に対応して戦略的に人材配置を実現するために行われたものであり,各省庁の幹部職員がそれぞれの所管行政に関して,内閣の方針に反しない範囲で積極的に提言を行うことを妨げるものではない。
 政権,与党の幹部には,各省庁の幹部職員に対して所管行政の今後必要となる政策の研究を促して,その意見を積極的に求めることを望みたい。しかしながら,近ごろ,政権の閣僚,幹部官僚から,文書・データを軽んじて記録するよりも記憶を優先させているかのような発言がとくに目を引く。記録を軽視する発言の続発は,記録を残すこと自体に関心がないからと思われる。政府の公文書管理制度を監視する第三機関が設立することを提言したい。
(2018年5月2日)
(初出『世界平和研究』2018年夏季号,No.218)